岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品熊は、いない B! 困難に怯まない社会派サスペンス映画 2023年10月24日 熊は、いない ©2022_JP Production_all rights reserved 【監督・脚本・製作】ジャファル・パナヒ 『君は行く先を知らない』との類似 図らずも親子の視点はトルコ国境にあり イラン映画の歴史は1900年の初頭にまで遡ることは可能だが、国内において映画が製作されるようになったのは、1979年のイラン革命後のことで、国際的な認知、評価を受けるのは、80年代の後半になってからのことだった。 日本では、『友だちのうちはどこ?』、『そして人生はつづく』が、93年に公開された。何もアッバス・キアロスタミ監督作品で、イラン映画と言えば同監督の名前が、しばらくは代名詞となる。 イラン映画では、革命後、政府による検閲は強化される傾向になった。その多くは宗教絡みで、検閲から逃れる方法として、政治的な批判を直接的には受けない、子どもを主人公にした作品が目立つようになった。 また、国内で資金を賄うことは難しく、フランス他のヨーロッパからの資本が多くを占めた。その結果、海外の映画祭などへの出品が盛んになり、国際的な評価も獲得することになった。 『熊は、いない』の監督、ジャファル・パナヒの最初の長編『白い風船』が日本で公開されたのは96年(初出は95年)のことだった。 『白い風船』は、金魚を手に入れたい7歳と少女の冒険譚で、子ども視点の瑞々しい描写は高い評価を受け、95年のカンヌ映画祭では新人監督賞にあたるカメラ・ドール賞を、また同年の、東京国際映画祭でもヤングシネマ東京ゴールド賞(新人賞)を受賞している。 パナヒ監督はテヘランで映画製作を学び、アッバス・キアロスタミ監督の助監督を務めた。デビュー作『白い風船』の脚本もキアロスタミ監督が書いている。 その後、パナヒ監督がイラン政府から厳しい弾圧を受けていることは有名で、映画製作は大袈裟ではなく命がけのことなのだが…。本作ではその困難な状況を逆手に取り、自らの現状を赤裸々に描いている。そして、抑圧的は政治化での生き辛さを登場する2組のカップルに体現させている。信念を曲げない強情さには、頭の下がる思いだが、"行く先" が見えないのは虚しい。 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 100% 観たい! (8)検討する (0) 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 2024年09月26日 / どら平太 日本映画黄金時代を彷彿とさせる盛りだくさんの時代劇 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 助けを求める人はもはや敵ではなく、ただの人間だ 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 海の男たちが下す決断を描くヒューマンドラマ more 2021年05月12日 / 新星劇場(長野県) 信州の豊かな自然に囲まれた街の小さな映画館 2021年03月17日 / 盛岡ピカデリー/ルミエール(岩手県) 東北の城下町にある市民が愛した小さな映画館 2023年06月21日 / PLANET + 1(大阪府) 16mmフィルムに収められた名作を現代に甦らせる。 more
『君は行く先を知らない』との類似 図らずも親子の視点はトルコ国境にあり
イラン映画の歴史は1900年の初頭にまで遡ることは可能だが、国内において映画が製作されるようになったのは、1979年のイラン革命後のことで、国際的な認知、評価を受けるのは、80年代の後半になってからのことだった。
日本では、『友だちのうちはどこ?』、『そして人生はつづく』が、93年に公開された。何もアッバス・キアロスタミ監督作品で、イラン映画と言えば同監督の名前が、しばらくは代名詞となる。
イラン映画では、革命後、政府による検閲は強化される傾向になった。その多くは宗教絡みで、検閲から逃れる方法として、政治的な批判を直接的には受けない、子どもを主人公にした作品が目立つようになった。
また、国内で資金を賄うことは難しく、フランス他のヨーロッパからの資本が多くを占めた。その結果、海外の映画祭などへの出品が盛んになり、国際的な評価も獲得することになった。
『熊は、いない』の監督、ジャファル・パナヒの最初の長編『白い風船』が日本で公開されたのは96年(初出は95年)のことだった。
『白い風船』は、金魚を手に入れたい7歳と少女の冒険譚で、子ども視点の瑞々しい描写は高い評価を受け、95年のカンヌ映画祭では新人監督賞にあたるカメラ・ドール賞を、また同年の、東京国際映画祭でもヤングシネマ東京ゴールド賞(新人賞)を受賞している。
パナヒ監督はテヘランで映画製作を学び、アッバス・キアロスタミ監督の助監督を務めた。デビュー作『白い風船』の脚本もキアロスタミ監督が書いている。
その後、パナヒ監督がイラン政府から厳しい弾圧を受けていることは有名で、映画製作は大袈裟ではなく命がけのことなのだが…。本作ではその困難な状況を逆手に取り、自らの現状を赤裸々に描いている。そして、抑圧的は政治化での生き辛さを登場する2組のカップルに体現させている。信念を曲げない強情さには、頭の下がる思いだが、"行く先" が見えないのは虚しい。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。