岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

聖書に綴られた偏見と差別の記憶

2018年04月08日

ローズの秘密の頁

©2016 Secret Films Limited

【出演】ルーニー・マーラ、ヴァネッサ・レッドグレイヴ、ジャック・レイナー、テオ・ジェームズ、エリック・バナ
【監督・脚本】ジム・シェリダン

真実に隠されていた衝撃の事実

 舞台はアイルランド。海岸沿いの道を走る車。医師のグリーン(エリック・バナ)は、車窓に映る風景に幼い頃の記憶を見る。取り壊しの決まった精神病院は慌ただしく移転の準備を進めている。そこに40年以上の間収監されている老女(ヴァネッサ・レッドグレイヴ)の診断書を書くことが、医師に科せられた任務だった。日常を壊され不安定になった老女の姿を見て、初めは乗り気でなかったグリーンだったが、患者と向き合うことを決める。老女=ローズ(ロザンヌ)は、自らの記憶を聖書の頁に書き込んでいた。
 ここからは、彼女の書いた断片的な言葉を頼りに、グリーンはローズに寄り添い過去を聞き取っていく。「私は息子を殺していない」…挿入される回想はローズの主観として描かれる。
 時は、ナチスがパリに侵攻した頃。ローズ(ルーニー・マーラ)は唯一の身内を頼って、田舎町の“禁酒ホテル”でメイドとして働いている。
 マイケルは酒店を営んでいるが、イギリス軍のパイロットとして従軍が控えてる。それを良しとしない町の男たちは、ローズに「お前はこちら側か?あちら側か?」と、ふたりの仲を牽制する。その仲間にもローズに好意を寄せる者がいて、酒場でダンスに誘ったりする。ダンスの際に体が近づき過ぎていることをいさめるのがゴーント神父。女人禁制の海岸での出会いをきっかけに、まるでローズを監視するかのごとくにつきまとう。ここで語られるローズの話は、彼女をめぐる男たちの話でもある。
 第二次大戦中、アイルランドは中立の立場にあった。イギリス連邦への忠誠心などない時代に、イギリス軍に味方する者を裏切者と断罪することはあまりに惨たらしい。また、宗教的には約8割を超えるローマ・カトリック信者の中、厳しすぎる戒律から、あらぬ差別が生じたことも想像に難くない。しかし、この映画の主眼は政治や宗教ではなく、女性への差別ではないか?「目を見て話すな」、あるいは男を誘う淫らな視線。ローズの天真爛漫さが悲劇を招いた。偏見を静かに告発する、ジム・シェリダン監督の秀作。

『ローズの秘密の頁』は岐阜CINEXほか、全国で公開中。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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