岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

独自世界 クローネンバーグ映画の毒と美

2023年09月19日

クライムズ・オブ・ザ・フューチャー

© Serendipity Point Films 2021

【出演】ヴィゴ・モーテンセン、レア・セドゥ、クリステン・スチュワート
【監督・脚本】デヴィッド・クローネンバーグ

食事補助椅子は不自由な拷問器具に見える

デヴィッド・クローネンバーグ監督作品を初めて観たのは『スキャナーズ』で、1982年のちょうど今頃の9月のことだった。

『スキャナーズ』は、超能力者の闘いを描いたホラー映画で、劇中のバトルで、パワーによって肉体が内部から破壊するという描写が強烈な印象を残した。良かれ悪しかれ、この残酷さはクローネンバーグの代名詞となり、出世作であり代表作となった。

見逃してしまったが、日本では『ラビッド』(77年)が、78年に公開されている。これも医療後遺症で起こるパニックホラー映画だった。

若き頃のクローネンバーグは、賛否両論を巻き起こしながらも、その独特な世界観によって、カルト的な支持を獲得した。

初公開では興行的には成功しなかった作品でも、比較的短い間合いでリバイバル公開されたことから、熱烈な支持を得たことも確かである。

96年のカンヌ映画祭で議論を巻き起こした『クラッシュ』(日本公開97年)は、審査委員長だったフランシス・F・コッポラの激しい批判をよそに、審査員大賞を受賞している。

『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』は、"人類の進化についての黙想" をテーマにしているが、このコピーでは何のことやらよくわからない、難解さを予想させる。

いきなり、不穏な雰囲気で始まる。食べ物ではない異物=プラスチックを食するようになった少女。母親はその不憫(?)なわが子を殺害する。

話は変わり、カップルが登場する。そんなに遠くない未来を想定(?)。人は人工的な環境に対応するため進化した(?)。その結果、生物学的な構造は変化し、体内では’"新たな臓器" が生まれ、同時に痛みを克服する。

カップルはアーティストとして、その新たに生まれた臓器を摘出する手術をショー化して披露する。露わになった臓器には、タトゥーが施されている…。

どこまでも難解だが、紛れもない独自世界。理解ではない、いや、それすら求めていないのかも知れない。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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