岐阜新聞 映画部

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生きるために闘った男の半生記

2023年09月12日

アウシュヴィッツの生還者

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【出演】ベン・フォスター、ヴィッキー・クリープス、ビリー・マグヌッセン、ピーター・サースガ ード、ダル・ズーゾフスキー ジョン・レグイザモ、ダニー・デヴィート
【監督】バリー・レヴィンソン

名匠バリー・レヴィンソン渾身の力作

ハリー・ハフトは、1925年、ポーランドに生まれた。第二次世界大戦後の1948年にアメリカ・ニューヨークに移住し、直ぐにプロボクサーとしてデビューした。野生味溢れる荒削りなスタイルながら、連戦連勝して頭角を現した。また、彼がアウシュヴィッツのユダヤ人強制収容所からの生還者であったことから、別の意味からも注目を集めた。

『アウシュヴィッツの生還者』は、このハリー・ハフトの半生を描いた映画である。

1949年、ニューヨーク。ハリー・ハフトの勝勢は傾きはじめていた。リングのマットに沈んだ彼は、自らの不甲斐なさに苛つき、リングの外でも強迫観念に追われていた。

ナチス侵攻直後に生き別れとなった恋人のレアの行方が一向に明らかにならない事に苛立ち、度々訪れるユダヤ人コミューンの相談窓口で悪態をつく。そんな彼に親身に寄り添ってくれるのは、女性事務員のミリアムだった。

物語は戦後の現在はカラーで、戦中の過去はモノクロの映像で描かれる。ハリーとレアの幸せな時は一瞬で、モノクロの殆どは過酷な収容所の日々である。

ハリーに近づいた記者は収容所で何があったのか?に興味を示し取材を申し込む。周囲からの反対をよそに、自らの存在を記事によって世間に広めるために、それが行方知らずのレアに届くことを願い、遂にそれを受入れる。

語られる収容所での真実。

ハリーを演じるのはベン・フォスターで、カラーとモノクロで映る彼の、まったくの別人を思わせる徹底した役づくりに驚く。削げ落ちた頬、肋骨の浮き出た痩せ細った体。

試合とは名ばかりの、殺し合いのリングに上がるハリーは、生きたいという唯一の希望に縋り、非情な闘いを続ける。

アウシュヴィッツの生還者を描いた作品は、数多くあり、その多くは本作同様に実話をもとにしている。繰り返される告発には、忘れないための鎮魂が込めらている。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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