岐阜新聞 映画部

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命を賭けた残酷なボクシングの試合の衝撃

2023年09月11日

アウシュヴィッツの生還者

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【出演】ベン・フォスター、ヴィッキー・クリープス、ビリー・マグヌッセン、ピーター・サースガ ード、ダル・ズーゾフスキー ジョン・レグイザモ、ダニー・デヴィート
【監督】バリー・レヴィンソン

ベン・フォスターの圧巻の俳優魂

ロバート・レッドフォード主演の「ナチュラル」、ロビン・ウィリアムズ主演の「グッドモーニング、ベトナム」、ダスティン・ホフマンとトム・クルーズの共演でアカデミー賞を受賞した「レインマン」等、1980年代に数々の優れた作品を撮ったバリー・レヴィンソン監督の久々の新作である。映画館でバリ―・レヴィンソンの新作を観るのは2001年公開の「バンディッツ」以来である。

アウシュヴィッツの収容所から生還したハリー・ハントの実話をもとにした作品で、収容所時代の回想をモノクロームで、戦後のアメリカ時代をカラーで描いている。

収容所時代の、試合を拒否すればガス室送り、試合に出ても負ければ射殺される非人道的で残酷なボクシングの試合に驚かされる。毎年のように、ナチスドイツの残虐行為を描いた新しい映画が公開されるが、まだまだ衝撃の事実があるものだ。

戦後はアメリカに渡ってプロボクサーになったハリー・ハントは、戦時中に生き別れになった恋人レアに自分の生存を知らせるために、アウシュヴィッツの収容所時代の取材を受け、ロッキー・マルシアーノと対戦し世間の注目を集める。しかし、レアからの連絡はなく彼女の死を確信する。

そして、新たに出会った女性ミリアムと結婚し息子も生まれるが、収容所時代のトラウマから悪夢にうなされ続ける。果たしてハリー・ハントに心安らぐ幸福は訪れるのだろうか。

バリ―・レヴィンソン監督は、全盛期を思わせるメリハリの効いた語り口でハリー・ハントの半生をドラマチックに描いている。深い余韻に浸れるラストシーンが素晴らしい。

過酷な体重の増減を成し遂げた、主演のベン・フォスターの俳優魂も圧巻。

語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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