岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

世界の辺境で奮闘する先生と、学習したい子どもたち

2023年09月14日

世界のはしっこ、ちいさな教室

© Winds – France 2 Cinéma – Daisy G. Nichols Productions LLC – Chapka – Vendôme Production

【出演】サンドリーヌ・ゾンゴ、スヴェトラーナ・ヴァシレヴァ、タスリマ・アクテル
【監督】エミリー・テロン

子どもへの教育の機会がいかに大切かがよくわかる

日本の義務教育就学率は、99.96%(2022年)である。先進国のほとんどが100%近くであり、初等教育の義務化は多くの国で保証されている。

しかし2018年のユネスコ統計研究所のデータでは、学校に通っていない子どもは、世界で2億5,840万人いると報告されている。

その理由は様々で、学校が少なかったり距離が遠かったりする物理的な障壁、家庭の経済的負担、学校へ通うことの保護者の無理解、紛争や自然災害などがあげられる。

教育機会が無い子どもは、読み書き計算ができないため必要な知識が得られなかったり、病気や災害など不測の事態に対する対応が難しかったり、進路や職業選択の機会が狭まり、社会参加が制限されるようになる。

本作は、西アフリカ・ブルキナファソ、ロシア・シベリア、南アジア・バングラデシュの辺境の地で奮闘する先生と、学習を求める子どもたちの姿を捉えたエデュケーションドキュメンタリーである。

ブルキナファソの先生は、言語が5種類ある子どもたちに公用語のフランス語を教える。ユニセフの世界子ども白書によれば、就学率は男79%女78%、若者の識字率は男62%女55%だ。2児を抱えた先生の苦労は並大抵ではないと思うが、彼女には使命感がある。

シベリアの原住民で、トナカイの遊牧で生計を立てるツングース系エヴァンキ族の子どもたちに先生が教えるのは、民族伝統の言葉だ。ロシアの文化に飲み込まれて伝統の消滅を危惧する先生の教えは尊い。ちなみに黒澤明監督『デルス・ウザーラ』(1975)のデルスは、ツングース系ナナイ族だ。

バングラデシュのボートスクールの先生は、生徒の児童婚を前にして、意識の低い親を説得する。バングラデシュでは、15歳までに15%、18歳までに51%の女子児童が結婚するのだ(世界子ども白書)。

子どもへの教育の機会がいかに大切かがよくわかる、応援したくなる映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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