岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

ハリー・ハフトの生き様を描いた、ホロコースト告発物

2023年09月11日

アウシュヴィッツの生還者

© 2022 HEAVYWEIGHT HOLDINGS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

【出演】ベン・フォスター、ヴィッキー・クリープス、ビリー・マグヌッセン、ピーター・サースガ ード、ダル・ズーゾフスキー ジョン・レグイザモ、ダニー・デヴィート
【監督】バリー・レヴィンソン

まるで別人のような凄まじい増減量

ホロコーストの実態を告発するには映像のインパクトは絶大だ。アラン・レネ監督が1955年に発表した32分の短編『夜と霧』は、世界で初めてアウシュビッツでの大量虐殺を告発したドキュメンタリーだ。カンヌ映画祭への出品は在仏ドイツ大使館の抗議で外され、フランス公開時もナチスへの協力を示す映像が修正された。1961年の日本公開時も、横浜税関は残虐場面56秒をカットした。

その後数々のホロコース物が製作されたが、決定版はスピルバーグのアカデミー賞作品賞受賞作『シンドラーのリスト』(1993)だ。ホロコーストの実態を、多くの人が映像として目にすることになった。

『アウシュヴィッツの生還者』は、実在のユダヤ人プロボクサー、ハリー・ハフトの生き様を、フィクションを交えて描いたホロコースト告発物である。

今年3月にCINEXでも公開された『ヒトラーのための虐殺会議』は、1942年1月に開催されたユダヤ人絶滅のヴァンゼー会議を忠実に再現した映画であったが、その政策の結果を描いたのが本作である。

主役のハリー・ハフトを演じるのはベン・フォスター。頬はげっそりやつれ果て、あばら骨が浮き出るほどのアウシュヴィッツ時代、1949年アメリカに渡り、精悍な顔つきとなるプロボクサー時代、1963年生き別れになった恋人レアの存在を知って会いに行く中年太り時代、まるで別人のように見える凄まじい増減量だ。

アウシュヴィッツ時代の生きる死ぬかのボクシング。恋人に生きている証を示すための、ロッキー・マルシアノとのボクシング。そもそもボクシングは、グローブを付けているとはいえ、基本的に相手を殴ってグロッキーさせるスポーツ。これがスポーツかと疑うほどの痛々しさだ。

レアが生きていたという設定は、強引にハッピーエンドに持っていくようで白々しく思えるが、映画全体としては、相変わらず「ホロコースト物に外れ無し」だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

観てみたい

100%
  • 観たい! (8)
  • 検討する (0)

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

ページトップへ戻る