岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

美術館の使命を舞台裏からあぶり出すドキュメンタリー

2023年09月04日

わたしたちの国立西洋美術館 奇跡のコレクションの舞台裏

©大墻敦

【監督・製作・撮影・録音・編集】大墻敦

上野の森コルビュジエの懐に抱かれた名作たち

東京上野にある国立西洋美術館は、近代建築の巨匠ル・コルビュジエが設計した日本で唯一の建造物で、地上3階、地下1階の鉄筋コンクリート造で1959年に竣工した。

コルビュジエが提唱した近代建築の5限則の全てに当てはまるのが、国立西洋美術館の本館で、2016年にユネスコにより世界遺産として登録された、世界に点在するコルビュジエ建築17の内の1つになる。

近代建築の5原則とは

ピロティ(=2階以上の建物で、地上からの柱で外部と接する形で作られた空間)/自由な平面/自由な立体/独立骨組みによる水平連続窓/屋上庭園

以上を発展させていくものだが、国立西洋美術館は半世紀以上の時を経て、当初のコルビュジエの建築構想からはズレが生じ始めていた。

2020年10月、コルビュジエの西洋美術館に近づけるための整備工事が始まる。

映画はその1年半に及ぶ長期休業に合わせ、美術館の舞台裏にまで潜入密着し、学芸員の仕事と美術館としての意義を見つめたドキュメンタリーである。

美術館の収蔵品は、開館当時にフランス政府から返還寄贈されることになった "松方コレクション" をもとにしている。

松方コレクションは、明治の元勲・松方正義の三男幸次郎によって収集された美術コレクションで、早くから、アメリカ、ヨーロッパに留学、西洋文化に精通していた彼による個人コレクションだった。総点数は1万を超えると言われていたが、松方の財政破綻により、国内の保管分は散逸した。海外の保管分も、ロンドンでは火災で焼失するなどしてしまった。フランスから戻ったのは370点で、国立西洋美術館はここから始まっている。

映画は美術品の管理保管、修復から、展覧会開催に絡んだお金の話、展示作品の貸借の駆引きなど、普段は見ることのできない、見せること(観客に)のない、裏の顔に迫る赤裸々な告白のようなスリルを含んでいて、すこぶる面白い。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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