岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

歴史に翻弄される三家族を繋ぐウクライナ民謡

2023年08月14日

キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩

©︎MINISTRY OF CULTURE AND INFORMATION POLICY OF UKRAINE, 2020 – STEWOPOL SP.Z.O.O., 2020

【出演】ヤナ・コロリョーヴァ、アンドリー・モストレーンコ、ヨアンナ・オポズダ、ポリナ・グロモヴァ、フルィスティーナ・オレヒヴナ・ウシーツカ
【監督】オレシャ・モルグネツ=イサイェンコ

ソ連兵が言う。「ウクライナに民謡などない」

本作の舞台ウクライナのイヴァーノ=フランキーウシクは、歴史に翻弄されている。1662年にポーランド王によりスタニスワヴフとして自治権を与えられるも、その後領主さまは1772年にオーストリアに変わり、一瞬独立するも1919年再びポーランド。1939年から第二次大戦中は、ソ連→ドイツ→ソ連と目まぐるしく、最終的にはソ連の領土で落ち着いた。市名は1962年ウクライナの作家にちなんで現名称に変更。1991年ウクライナが独立して現在に至るだ。

この変遷と同じように、映画の主役となる、ユダヤ人・ウクライナ人・ポーランド人一家も歴史に翻弄される。ユダヤ人はナチスドイツにより、人種自体を殲滅させられるという歴史的迫害を受けており、ウクライナ人はソ連やロシア、ポーランド、オーストリアに迫害・併合され続け、ポーランドもドイツとソ連から領土に侵攻され独立を奪われた。

映画の舞台はポーランド領だったスタニスワヴフ。そこにあるユダヤ人がオーナーのアパートに、ウクライナ人とポーランド人一家が引っ越してくるところから映画は始まる。のちに同じアパートに住むことになるドイツ人将校も含め、ひとつ屋根の下での生活だ。

映画は、三家族が次第に交流を深めていく様子を丹念に追っていく。そして戦争が激しさを増す中でのナチスとソ連による人種差別的暴虐をスリリングに描いていく。

映画の見どころは、もちろんタイトルにもなったウクライナ民謡「シェドリック」=「キャロル・オブ・ザ・ベル」を歌うところ。ウクライナ人一家の娘ヤロスラワが何度も歌う。耳に馴染みのある素敵な曲であり、歌で繋がる連帯と平和への願いを表しているようだ。ソ連兵が「ウクライナに民謡などない」と言うところなど皮肉が効いている。

ラスト、1973年、ニューヨークでの三人娘の再会。一人歌手になっているのだが、それは誰でしょう?というオチまで皮肉が効いている。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

観てみたい

100%
  • 観たい! (9)
  • 検討する (0)

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

ページトップへ戻る