岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品aftersun/アフターサン B! 娘と父が過ごしたひと夏に刻まれた輝きと闇 2023年08月08日 aftersun/アフターサン © Turkish Riviera Run Club Limited, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute & Tango 2022 【出演】ポール・メスカル、フランキー・コリオ、セリア・ロールソン・ホール 【監督・脚本】シャーロット・ウェルズ 魔術のような映像体験はあまりにも静か過ぎる ソフィ(フランキー・コリオ)は11歳。普段は離れて暮らす父カラム(ポール・メスカル)に連れられて、夏休みの休暇旅行に向かう。そこはトルコの少し鄙びたリゾート地だった。 『aftersun/アフターサン』は、物語を語る上での情報量が著しく乏しい。 例えば、ソフィ11歳と31歳のカラムの年齢がわかるのも映画の半ばあたりの、誕生日のくだりまで待たなければならない。何より娘と父の現在の状況すらも定かにはならない。 唯一、ソフィが母親に電話をするシーンで、離婚していることがわかり、それでも父と母は、娘の幸せをともに願う感情を共有できる、良好な関係であることがわかる。 物語は、"今"=あの時の父と同じ31歳になったソフィが、その日を思い返す構成なのだが、今のソフィの状況も暗闇にまみれよく見えない。 父と娘は仲良しに見えるし、時に少し歳の離れた恋人にも見える。ソフィは父親が大好きで、甘える様子も見せるのに、急に距離をおく揺らぎは、思春期の当たり前の感情だろうか。 ビデオとカメラアイの映像の境界が曖昧に見えるのは、何を映しているのかがわからなくなる瞬間があるからで、親子が部屋で会話をしているのに、映像は固定されたまま、部屋の様子だけを映し続ける。これはビデオの映像だろうか? その瞬間に消えたテレビのブラウン管画面に、ふと映り込む何かが見える。 そしてあらためて明確になるのは "これはソフィの記憶の断片" だったのだということで、彼女は計画もない旅のひと時でも、それなりの好奇心の発散を大胆に体験する。 映画の途中、一体何を見せられているのだろうか?という疑心が過ぎる。ソフィの思い出に隠れたカラムの謎(腕の包帯、夜の海など)が、明らかにはならない。にも関わらず、別れのラストシーンで図らずも涙してしまうのは、監督のシャーロット・ウェルズが、映像の所々に込めた感情の起爆装置が、刹那、起動するからに他ならない。怖るべき映画を見せられたのか? 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 100% 観たい! (14)検討する (0) 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 2024年09月26日 / どら平太 日本映画黄金時代を彷彿とさせる盛りだくさんの時代劇 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 助けを求める人はもはや敵ではなく、ただの人間だ 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 海の男たちが下す決断を描くヒューマンドラマ more 2020年01月08日 / HOTORI×ほとり座(富山県) 商店街の一角にある映画と音楽と食のセレクトショップ 2019年04月10日 / シネマ5(大分県) 映画館の滞留時間を長く…映画の余韻を楽しむ 2020年01月22日 / キネカ大森(東京都) ミニシアターから名画座まで…いくつもの顔を持つ街の映画館 more
魔術のような映像体験はあまりにも静か過ぎる
ソフィ(フランキー・コリオ)は11歳。普段は離れて暮らす父カラム(ポール・メスカル)に連れられて、夏休みの休暇旅行に向かう。そこはトルコの少し鄙びたリゾート地だった。
『aftersun/アフターサン』は、物語を語る上での情報量が著しく乏しい。
例えば、ソフィ11歳と31歳のカラムの年齢がわかるのも映画の半ばあたりの、誕生日のくだりまで待たなければならない。何より娘と父の現在の状況すらも定かにはならない。
唯一、ソフィが母親に電話をするシーンで、離婚していることがわかり、それでも父と母は、娘の幸せをともに願う感情を共有できる、良好な関係であることがわかる。
物語は、"今"=あの時の父と同じ31歳になったソフィが、その日を思い返す構成なのだが、今のソフィの状況も暗闇にまみれよく見えない。
父と娘は仲良しに見えるし、時に少し歳の離れた恋人にも見える。ソフィは父親が大好きで、甘える様子も見せるのに、急に距離をおく揺らぎは、思春期の当たり前の感情だろうか。
ビデオとカメラアイの映像の境界が曖昧に見えるのは、何を映しているのかがわからなくなる瞬間があるからで、親子が部屋で会話をしているのに、映像は固定されたまま、部屋の様子だけを映し続ける。これはビデオの映像だろうか? その瞬間に消えたテレビのブラウン管画面に、ふと映り込む何かが見える。
そしてあらためて明確になるのは "これはソフィの記憶の断片" だったのだということで、彼女は計画もない旅のひと時でも、それなりの好奇心の発散を大胆に体験する。
映画の途中、一体何を見せられているのだろうか?という疑心が過ぎる。ソフィの思い出に隠れたカラムの謎(腕の包帯、夜の海など)が、明らかにはならない。にも関わらず、別れのラストシーンで図らずも涙してしまうのは、監督のシャーロット・ウェルズが、映像の所々に込めた感情の起爆装置が、刹那、起動するからに他ならない。怖るべき映画を見せられたのか?
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。