岐阜新聞 映画部

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政治に翻弄されたノーベル文学賞作家の遺灰の行方

2023年07月24日

遺灰は語る

©Umberto Montiroli

【出演】ファブリツィオ・フェッラカーネ、マッテオ・ピッティルーティ、ロベルト・エルリツカ(声)
【監督・脚本】パオロ・タヴィアーニ

語るのはイタリア現代史 巻末の短編で作家を語る

兄ビットリオ、弟パオロのタビアーニ兄弟は、イタリアを代表する兄弟映画監督である。 それぞれにキャリアをスタートさせた2人が共同監督として映画を発表するようになったのは60年代の後半で、テレビ映画と並行して創作活動を続けた。

『父 パードレ・パドローネ』は、1977年のカンヌ映画祭でパルムドール(最高賞)を受賞した兄弟の代表作だが、日本での劇場公開は遅れて、82年の夏のことだった。ちなみに、この作品は当初、テレビ映画として製作された。

『遺灰は語る』は、1934年にノーベル文学賞を受賞したルイジ・ピランデッロの遺灰にまつわる始末記であり、兄ビットリオ亡き後、90歳を超えたパオロ単独の監督作品である。

ルイジ・ピランデッロ(ピランデルロと表記する場合もある)は、1867年イタリア・シチリア島に生まれた。大学では言語学、哲学を学んだが、翻訳の仕事に携わったことから、文学への志向が高まった。

演劇に興味を持ったピランデッロが本格的に執筆活動を始めたのは、第一次世界大戦が終結した1915年頃からで、発表した戯曲は高い評価を受けた。1921年には、のちに代表作となる「作者を探す六人の登場人物」を発表している。しかし、日本語の翻訳は少なく(初の戯曲集は2000年に出版)その知名度は高いとは言えず、残念ながら馴染みのある作家ではない。

1936年12月10日、ローマで世界的文豪ルイジ・ピランデッロが死去する。自分の遺灰は故郷のシチリアへ移すようにと遺言されていたが、独裁者ムッソリーニは、彼の名声を政治的に利用するため、ローマに留置き埋葬してしまう。

そして、終戦。遺灰はようやくシチリアへの帰還をめざすのだが…輸送を依頼した米軍機は離陸直前に飛行中止。列車では紛失の騒動…ことは簡単にはいかない。

モノクロの重厚な映像に反して、コメディータッチの語り口は巧妙で若い。そして、巻末の短編のおまけを超えた切れ味が凄い。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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