岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

正と異について考察するブラックコメディ

2023年07月12日

波紋

©2022 映画「波紋」フィルムパートナーズ

【出演】筒井真理子/光石研/磯村勇斗/安藤玉恵、江口のりこ、平岩紙、ムロツヨシ/津田絵理奈、花王おさむ/柄本明/木野花、キムラ緑子
【監督・脚本】荻上直子

宗教に守られた穏やかな主婦の日常に投げ込まれた異物

神とは?

人に信じられてこそ、その存在意義がある。では何を信じる?

それはとてつもない力だったかも知れない。人はその力を目の当たりにし、それにすがる。漠然とした信仰のはじまり。

主婦・須藤依子(筒井真理子)は、日課にしている庭の草花の手入れに勤しむ。穏やかな表情から、幸せな日常がうかがえるが、それは独り暮らしで、孤独を押しやった後の達観により、ようやく、獲得した時間のように見える。

依子がその大切な時間を過ごせているのは、祈りによってもたらされている。"緑命会" という宗教団体の勉強会に参加することが今や生きがいとなっていた。

そんな穏やかな日々に、依子にすれば異物としか言えないものが乱入して来る。

突然の失踪から10数年。夫の修(光石研)が帰って来る。実の父の介護を依子に押しつけ姿を消した夫。今更、どのツラ下げて…なのに、こともあろうに、患った癌の治療のために必要な治療費の無心までしてくる。呆れることも通り越して茫然とするしかない。

さらに、息子の拓哉(磯村勇斗)が恋人を連れ帰る。結婚をしたいと紹介された女性には障害があった。いざ、我が身に降りかかる異物を不幸と判断してしまう依子。

パート先でクレイマーの客に罵倒され、呆然とするが、それは心の奥に隠してきたパンドラの箱の蓋を開けるきっかけとなる。

自らのオリジナル脚本を監督したのは荻上直子。昨年公開された『川っぺりムコリッタ』にも登場する、穏やかな日常を脅かす異物=乱入者が起こす、"漣" についての物語であることは共通しているが、その方向性は真逆に振れる。

新興宗教とレッテルの貼り替えをした宗教の議論には違和感があり、水面を乱す波紋の存在に宗教を絡める方法には疑問がある。しかし、偽善に鈍感ではいられなくなるメッセージ性には共感できるかはさておき、力強さはある。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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