岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

ゆるくて人に優しいまなざし、見やすい荻上監督作

2023年07月11日

波紋

©2022 映画「波紋」フィルムパートナーズ

【出演】筒井真理子/光石研/磯村勇斗/安藤玉恵、江口のりこ、平岩紙、ムロツヨシ/津田絵理奈、花王おさむ/柄本明/木野花、キムラ緑子
【監督・脚本】荻上直子

「寛容さを示すときです」VS「仕返ししたら」

荻上直子監督作品は、長編デビュー作『バーバー吉野』(2003)以降、2作目の『恋は五・七・五』(2005)以外はすべて観ている。なかでも『かもめ食堂』(2006/キネ旬9位)や『彼らが本気で編むときは、』(2017/キネ旬10位)は,世評の高さもさることながら、私も年間ベストテンに入れるほど好きな作品である。

作風は暖かい日差しが差すようなゆるくて人に優しいまなざしが特徴。社会の不条理に対する静かな怒りは私の好むところだが、『めがね』や『トイレット』や『レンタネコ』などは、作為が目立ちすぎて好きになれなかった。

『波紋』は、新興宗教・原発事故・障害者差別・カスハラ・在宅介護・夫婦の愛憎など現代の社会問題を扱ってはいるが、ちょっと入れ込み過ぎでなぞっただけと感じてしまう自分がいる。荻上監督が描く視点には共感すること大だが、同じ思想性であるがゆえの気恥ずかしさかもしれない。

映画は現代のストレス社会の実態を、主に筒井真理子さん演ずる須藤依子の視点で描かれていく。彼女の周辺にはこれでもかとストレスがふりかかる。勝手に庭に入ってくる隣人の猫、勤め先のスーパーの迷惑な客(柄本明)、蒸発していた夫(光石研)が帰ってきたかと思えば、資産を寄こせとの身勝手な要求。

いらだちの気持ちを教祖様に相談すると「寛容さを示すときです」と、いかにも的なアドバイスをされて、普段の水よりもさらに高額な水を購入させられる。一方でパート先の清掃員(木野花)からの「仕返ししたら」のアドバイスは、正直スカッとするのだ。

登場人物が類型的で記号化されたようなキャラに感じてしまうのは私の決め付けに過ぎないが、最後のフラメンコダンスのシーンはあまりに唐突過ぎてとまどってしまった。映画の途中で不自然に手拍子がなっていたが、これのための伏線以外に意味はない。

しかしわかりやすく見やすい映画であることは確かだ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

観てみたい

100%
  • 観たい! (8)
  • 検討する (0)

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

ページトップへ戻る