岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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自分の人生と照らし合わせて観られる素敵な映画

2023年06月26日

帰れない山

© 2022 WILDSIDE S.R.L. – RUFUS BV – MENUETTO BV – PYRAMIDE PRODUCTIONS SAS – VISION DISTRIBUTION S.P.A.

【出演】ルカ・マリネッリ、アレッサンドロ・ボルギ、フィリッポ・ティーミ、エレナ・リエッティ ほか
【監督・脚本】フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン&シャルロッテ・ファンデルメールシュ

須弥山とそれをとりまく8つの山

映画『帰れない山』の日本語タイトルは、パオロ・コニュッティの原作小説(関口英子訳・新潮社刊)どおりであるが、原題は「Le otto montagne(8つの山)」である。「(もうあの頃に)帰れない山」という意味の日本語タイトルも悪くはないが、やはり古代インドの世界観で、仏教やヒンドゥ教、バラモン教などに共通する「(須弥山とそれをとりまく)8つの山」の方が、映画の世界観を表している。

ミラノの街に住む繊細な少年ピエトロが、山好きな両親に連れられて来た、風光明媚な北イタリア、モンテ・ローザ山麓のアオスタ渓谷で、牛飼いの少年ブルーノと出会うところから物語は始まる。

2人で野や山を駆け巡り熱い友情を確かめていった少年期、すれ違っても目を合わせるだけで疎遠になってしまった思春期、父の死をきっかけに20年ぶりに再会し、ふたたび友情を築いていく青年期。

世界中の山々を旅していたピエトロ(青年期:ルカ・マリネッリ)が、チベットで聞いた話として、地元に残るブルーノ(青年期:アレッサンドロ・ボルギ)に「8つの山」の話をする。

「世界の中心にある最も高い山・須弥山と、その周りにある8つの山。須弥山に登った者と、8つの山すべてに登った者、どちらがより多くのことを学んだのか?」

すなわちブルーノが最も高い山を極めた者で、ビストロはその周りの山を極めた者と言えるのだ。

2人はそれぞれの道を歩んで行くのだが、強い父の存在感が強かったピエトロと、父が不在だったブルーノは、やがて父の重圧から解放され自分の力で歩み始める。山は動かざるもので、そことどう向き合うかだが、父はやがていなくなるのであり、どう受け入れるかが大事なのだ。

映画は、圧倒的自然美をスタンダードサイズで切り取っていく。思い出の中にある映像を、優しく包み込むように視線を集中させる。自分の人生と照らし合わせて観られる素敵な映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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