岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

社会問題も十分に含んだ、楽しい料理コメディ

2023年06月12日

ウィ、シェフ!

© Odyssee Pictures - Apollo Films Distribution - France 3 Cinéma - Pictanovo - Elemiah- Charlie Films 2022

【出演】オドレイ・ラミー、フランソワ・クリュゼ
【監督】ルイ=ジュリアン・プティ

タイムリミットは18歳

フランスの公的機関の統計によると、移民は2021年に700万人程度となり、全人口の10.3%を占めた。自由を求めてフランスにやってきた外国人に寛容であるべきという共通理念はあるものの、貧困者は多く、移民を歓迎しない人たちも増えてきた。

そんな中、様々な切り口から移民問題を取り上げた映画が出てきている。

本作は、自立支援施設で暮らす親や親類など同伴者がいない移民の若者は、18歳になるまでに職業訓練を受けなければ直ちに祖国へ強制送還されるという、どうやらあまりフランス本国でも知られてない現況を描いているという。

世界各国から移民してきた40人の若者たちが暮らす自立支援施設。そこへやってきたのは我が強く、天涯孤独なスーシェフ・カティ(オドレイ・ラミー)だ。で、施設長ロレンゾ役は、『最強のふたり』(2011)で、下半身不随の大富豪を演じたフランソワ・クリュゼ。

大物俳優2人と関わる40人は、全員オーディションで選ばれた実際にパリの移民施設で暮らす若者たち。プロの最良の演技者と、演技は素人の若者たちのコラボレーションはとてもうまくいっており、若者たちは映画の演技者としても成長が見てとれるのだ。

映画は、プロフェッショナルのスーシェフ・カティが、食うためにやむなく入った、必要な調理道具も予算もない自立支援施設での話。フランス人のステレオタイプである個人主義のカティが、40人に調理師のCAP(職業適格証)を取らせ、フランスで安定した暮らしができるよう支援するというストーリーだ。

両者が次第にココロを開いていく様子は、王道の演出とはいえ、見ていて心地よい。調理している料理には、それぞれの出身国の料理も出てきて、食をそそられる。

身寄りのないカティや若者たちが、疑似家族のようになって「ウィ、シェフ!」と嬉しそうに声をあげる。社会問題も十分に含んだ、本当に楽しい料理コメディだ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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