岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

セーヌ川に浮かぶデイケア施設に集う人々見つめたドキュメンタリー

2023年06月05日

アダマン号に乗って

© TS Productions, France 3 Cinéma, Longride - 2022

【監督】ニコラ・フィリベール

寄り添おうとする優しさともに生きる喜び

パリ、セーヌ川の穏やかな水面に浮かぶちょっと大きな木造の建造物。

桟橋を渡って続々と人々がやって来る。しかし、そこは客船や遊覧船の類ではなく、精神疾患のある人が、集う "デイケア" の施設として運営されている船・アダマン号だった。

監督のニコラ・フィリベールは1951年フランス北部の都市ナンシーに生まれた。父は映画学の講師で、映画作りの多くを学んだ。大学では哲学を専攻した。

1970年代から助監督を務めるなどして映画に関わるようになり、78年にジェラール・モルディヤと共同監督をした『指揮者の恋』でドキュメンタリー作家としてのキャリアをスタートさせた。テレビ向けの作品に携わった後、90年に長編ドキュメンタリー『パリ・ルーヴル美術館の秘密』で注目を集めた。

92年に発表した『音のない世界』は聾者の "対話" を見つめた作品。

本作の前作にあたる『人生、ただいま修行中』(2018年)は、医療の現場、看護師たちの訓練の様子を映像によって記述した作品である。

デイケア施設アダマン号では、様々なワークショップが行われる。

アートに興味がある人は、色とりどりの色彩を屈指した絵画を描く。物を創造する喜び。

一角ではコーヒーショップが運営され、お客さんを受け入れ、コーヒーでもてなし、レジ打ちもする。社会生活の実体験。

音楽好きな人は楽器を奏で、即興のコンサートを開き、ロックを熱唱し披露する。

そこに集う人々は均一ではない、様々な個性を持っている。コミニュケーションにもケースバイケースが存在するが、一貫しているのは、無理な型はめをする事なく、話す人の言葉を最後までしっかりと聞くことだ。

心にトラウマを抱えた人、それを受け入れることは、互いの違いを認めて曝け出すこと。

人生には豊かな何か見つけることが不可欠、ということをあらためて気づかせてくれる映画だ。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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