岐阜新聞 映画部

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燦然と光り輝く、映画史に残る傑作

2023年06月01日

ラストエンペラー 劇場公開版 4Kレストア

© Recorded Picture Company

【出演】ジョン・ローン、ピーター・オトゥール、ジョアン・チェン、坂本龍一
【監督】ベルナルド・ベルトルッチ

世界史的な大きさでの波乱万丈の生涯

アカデミー賞9部門受賞、キネ旬ベストワン、配給収入24億5千万円(1988年No.1)。坂本龍一さんが日本人で初めてアカデミー賞作曲賞を受賞した『ラストエンペラー』(1987)は、映画ファンだけでなく社会現象としても話題になったバブル全盛期の超大作だ。

しかし何を隠そう、私はこの超有名作を劇場で観たことがなかった。のちにビデオでは見たが、そんなの観たうちには入らないとわかっている。何人かの映画ファンの友人が、「『ラストエンペラー』が生涯のベストワン」と聞いてはいるが、その話になると巧みにかわして逃げてきた。

初公開から35年。満を持してようやくCINEXで観ることが出来た。あらためて言うまでもないが、素晴らしい傑作である。

愛新覚羅溥儀(1906-1967)。清朝最後の皇帝在位(1908-1912)は2歳~6歳。1924年にクーデターで紫禁城から退去したのが18歳。満州国皇帝在位(1934-1945)は、28歳~39歳。ソ連軍捕虜・中国戦犯(1945-1959)は39歳から53歳。そして満州族の代表として政協全国委員選出(1964-1967)は58歳~61歳。1967年に61歳で死去。皇帝から戦犯、一庭師、全国委員と、世界史的な大きさでの波乱万丈の人生だ。自分の意志で決めたことはほとんどなく、政治情勢に翻弄された生涯である。

いまさらながら凄いと思うのは、ベルナルド・ベルトルッチ監督による絢爛豪華で華麗なる映像美だ。細部までこだわった撮影は、4Kレストア版ということもあるのか圧倒的再現度だ。幼児を皇帝に据えたことで大人たちが右往左往する姿が紫禁城で繰り広げられるが、滑稽かつ微笑ましい。

驚くべきは満州国の描き方。ほぼ植民地的統治機構やアヘン栽培まで踏み込んでおり、ニュース映像では南京事件や人体実験にまで触れられている。

決して古びてない映画史に残る傑作である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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