名作黒澤明版の見事なリメイク
2023年06月01日
生きる LIVING
©Number 9 Films Living Limited
【出演】ビル・ナイ、エイミー・ルー・ウッド、アレックス・シャープ、トム・バーク
【監督】オリヴァー・ハーマナス
【発売情報】2023年8月16日(水)発売
・「生きる LIVING」Blu-ray 5,500円(税抜価格 5,000円)
・「生きる LIVING」DVD 4,400円(税抜価格 4,000円)
【発売元・販売元】東宝
ビル・ナイの名演が創造した英国紳士のリアル
黒澤明監督の『生きる』は昭和27(1952)年秋に公開された。
脚本は黒澤、橋本忍、小國英雄のトロイカ体制で執筆された。はじめ、小國はトルストイの「イワン・イリッチの死」を元のにした物語を描きたいと黒澤から相談されたと話しているが、第1稿を書き上げたのは、「後、75日しか生きられない男」というテーマを提示された橋本忍だった。
52年正月明け、黒澤と橋本は箱根の旅館に籠り、脚本の仕上げを始めた。4日遅れで小國が合流し、黒澤と橋本が書いた同じシーンの取捨選択を小國が任された。当初のタイトルは『渡辺勘治の生涯』だった。2月5日、脚本は『生きる』と改題され完成した。
『生きる LIVING』は、黒澤明監督作品をノーベル賞作家のカズオ・イシグロが脚色リメイクしたイギリス映画である。
1953年のロンドン。ウィリアムズ(ビル・ナイ)は、真面目一徹の仕事人間の公務員。それ故、普段の生活は味気ないものと感じていた。
ある日、癌に冒されていることがわかり、医師からは余命半年を宣告される。
残された時間をいかにして使うか?ウィリアムは仕事を休み、リゾート地でのドンチャン騒ぎを選ぶ。しかし、それで心の空洞は満たされることなくロンドンに戻る。
リメイクには一筋縄ではいかない難関がつきもので、どちらかと言えば成功例は少ない。
本作は大前提の日英の国の違いは別として、時代設定には大差はなく、第二次世界大戦の後遺症がまだ、感じられる点では共通してる。また、他の設定もほぼ踏襲しているが、その中で唯一目立つ違いは上映時間=尺だろうか。その差は40分ほどあり、そこに見えるのは、黒澤明版に対する細心のリスペクトのもとでの削ぎ落としである。そして、主人公・山本勘治のデフォメルは、英国紳士の気品を備えたウィリアムのリアルとして再生されている。
もうひとつ「ゴンドラの唄」は…。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。