岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

心揺さぶられる密度の濃い会話劇

2023年05月30日

ザ・ホエール

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【出演】ブレンダン・フレイザー、セイディー・シンク、ホン・チャウ、タイ・シンプキンス、サマンサ・モートン
【監督】ダーレン・アロノフスキー

ブレンダン・フレイザーの人間味豊かな好演

今年の外国映画は父と子のドラマが豊作である。「いつかの君にもわかること」、「The Son 息子」、「すべてうまくいきますように」、そしてこのダーレン・アロノフスキー監督の「ザ・ホエール」。

「ザ・ホエール」は「The Son 息子」同様舞台劇の映画化である。そして「ザ・ホエール」の主人公と娘の関係は、「The Son 息子」の主人公と息子の関係に似ている。ドラマの展開はまったく違うが、どちらの子も家庭を捨てて新たな恋人と一緒になった父親を憎んでいる。

「ザ・ホエール」は、同性の恋人を亡くしたショックから過食症になり、270キロを超える巨体で死期が迫っている主人公が、離婚して以来音信不通になっていた17歳の娘との関係を修復しようとするドラマ。

舞台は主人公の住むアパートの一室に限定され、スタンダードサイズの画面が彼の巨体を一層強調する効果を上げている。

特殊メイクで動きを封じられながら、主人公の悲哀を人間味豊かに演じたブレンダン・フレイザーが素晴らしい。彼が亡き恋人の妹である友人役のホン・チヤウ(アカデミー賞助演女優賞ノミネートも納得の好演)、新興宗教の勧誘員の青年(タイ・シンプキンス)、元妻(サマンサ・モートン)、そして娘(セイディ・シンク)と繰り広げる会話劇は、密度が濃くそれでいてユーモアもあり引き込まれる。

「レスラー」でミッキー・ロークを復活させ、「ブラック・スワン」でナタリー・ポートマンにアカデミー賞主演女優賞を受賞させたダーレン・アロノフスキー監督は、この「ザ・ホエール」でブレンダン・フレイザーを蘇らせアカデミー賞主演男優賞まで受賞させた。

タイトル「ザ・ホエール」は主人公の巨体と、作中で何度も引用されるハーマン・メルヴィルの「白鯨」による。

語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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