岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品The Son/息子 B! 心の病に寄り添う家族の物語 2023年05月22日 The Son/息子 © THE SON FILMS LIMITED AND CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2022 ALL RIGHTS RESERVED. 【出演】ヒュー・ジャックマン、ローラ・ダーン、ヴァネッサ・カービー、ゼン・マクグラス、アンソニー・ホプキンス 【監督・脚本・原作戯曲・製作】フロリアン・ゼレール 一瞬にして変化する感情の揺れを実感する 政治家にもクライアント持ち、有能な弁護士として活躍しているピーター(ヒュー・ジャックマン)は、再婚したベス(バネッサ・カービー)と生まれて間もない子どもと、何不自由のない充実した毎日を送っていた。 そんなある日、前妻のケイト(ローラ・ダーン)が、突然、ピーターの元を訪れる。ただならぬ様子のケイトが口にしたのは、ふたりの息子で17歳になるニコラス(ゼン・マクグラス)の様子がおかしく、ひと月に渡り不登校が続き、部屋に引きこもってしまっている。自分ひとりでは手に負えないという訴えだった。 久しぶりに再会したピーターとニコラス。ぎこちないその瞬間の修復を待たずに、ニコラスは「父さんといたい…」と懇願してくるのだった。 『The Son 息子』は、離れて暮らしていた父と息子が、一緒に暮らすことで、心にできてしまった距離を縮めようと格闘する、愛の再生の物語である。 監督は前作『ファーザー』(2020年/日本公開21年)で衝撃的なデビューを飾ったフロリアン・ゼレールで、今回も自らの戯曲を原作に、アカデミー脚色賞を受賞したクリストファー・ハンプトンとのコンビを継承し、映画の脚本として完成させている。 設定は当たり前の日常を送っていた家族に突然襲いかかる異変を題材に、父と娘から父と息子に代わってはいるが、共に親子の物語であり共通点が多い。 演劇的と言われる演出手法は、戯曲を原作にしている以上、当然のことだが、ゼレール監督は演劇=舞台における登場人物の出入りをスクリーン上ならではのテクニックで見せる。 撮影では、ドアや窓を配置して、人物を縦の位置に配置する構図を用い、台詞のやり取りを絡めた移動で、感情の微妙な変化浮かび上がらせ、同時に緊張感を維持させている。 俳優陣が繰り広げる台詞のセッションも、巧みな緩急で、不可解な心の闇に迫ろうとする。 甘美な親子愛にとどまらない怖い映画である。 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 100% 観たい! (11)検討する (0) 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 2023年12月11日 / パトリシア・ハイスミスに恋して 人気作家の真実に迫るドキュメンタリー 2023年12月11日 / パトリシア・ハイスミスに恋して 弱さや強がりが垣間見られる異色のドキュメンタリー 2023年12月11日 / インファナル・アフェアII 無間序曲 4K 若き日のヤンとラウの青春物語、無間道への序曲だ more 2019年04月10日 / シネマ5(大分県) 映画館の滞留時間を長く…映画の余韻を楽しむ 2019年01月16日 / 高田世界館(新潟県) 明治44年の建築当時のまま…登録有形文化財の映画館 2017年12月21日 / 飯田トキワ劇場(長野県) 雄大な山々に囲まれたスモールタウンの映画館 more
一瞬にして変化する感情の揺れを実感する
政治家にもクライアント持ち、有能な弁護士として活躍しているピーター(ヒュー・ジャックマン)は、再婚したベス(バネッサ・カービー)と生まれて間もない子どもと、何不自由のない充実した毎日を送っていた。
そんなある日、前妻のケイト(ローラ・ダーン)が、突然、ピーターの元を訪れる。ただならぬ様子のケイトが口にしたのは、ふたりの息子で17歳になるニコラス(ゼン・マクグラス)の様子がおかしく、ひと月に渡り不登校が続き、部屋に引きこもってしまっている。自分ひとりでは手に負えないという訴えだった。
久しぶりに再会したピーターとニコラス。ぎこちないその瞬間の修復を待たずに、ニコラスは「父さんといたい…」と懇願してくるのだった。
『The Son 息子』は、離れて暮らしていた父と息子が、一緒に暮らすことで、心にできてしまった距離を縮めようと格闘する、愛の再生の物語である。
監督は前作『ファーザー』(2020年/日本公開21年)で衝撃的なデビューを飾ったフロリアン・ゼレールで、今回も自らの戯曲を原作に、アカデミー脚色賞を受賞したクリストファー・ハンプトンとのコンビを継承し、映画の脚本として完成させている。
設定は当たり前の日常を送っていた家族に突然襲いかかる異変を題材に、父と娘から父と息子に代わってはいるが、共に親子の物語であり共通点が多い。
演劇的と言われる演出手法は、戯曲を原作にしている以上、当然のことだが、ゼレール監督は演劇=舞台における登場人物の出入りをスクリーン上ならではのテクニックで見せる。
撮影では、ドアや窓を配置して、人物を縦の位置に配置する構図を用い、台詞のやり取りを絡めた移動で、感情の微妙な変化浮かび上がらせ、同時に緊張感を維持させている。
俳優陣が繰り広げる台詞のセッションも、巧みな緩急で、不可解な心の闇に迫ろうとする。
甘美な親子愛にとどまらない怖い映画である。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。