岐阜新聞 映画部

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「赦す」という意味を真摯に問うた、辛くて重い映画

2023年05月08日

赦し

©2022 December Production Committee. All rights reserved

【出演】尚玄、MEGUMI、松浦りょう、生津徹、成海花音、藤森慎吾、真矢ミキ
【監督・編集】アンシュル・チョウハン

「罪を憎んで人を憎まず」が本当に出来るのか?

本作のタイトルは『赦し』であり「許し」ではない。聖書では「赦す」は「相手を罰したいという自分の欲求を手放して、すべてを神の御手に委ねること」とされている。一方「許す」は相手の行為を許可するということだ。

わが国で多くの人が信仰する仏教では、「前世の悪業の必然的な結果として現在の不幸がある」という「因果応報」という考え方がある。そのためか死刑制度存置の世論は賛成が圧倒的で、一般的な犯罪でも処罰感情が高く、少年犯罪でも厳罰化を望む声が大きい。

本作は、このような日本人気質の中で、果たして「赦す」とはどういことなのか?「罪を憎んで人を憎まず」ということが本当に出来るのか?を真摯に問うた、辛くて重い映画である。

17歳の高校生の時、同級生を殺してしまった加害者・夏奈(松浦りょう)。殺された娘の父親で、仕事もせず酒浸りとなり夏奈を憎み続ける・克(尚玄)。辛い過去に区切りを付けたい母親で、克と離婚後再婚した澄子(MEGUMI)。この3人に加え、夏奈側の人権派弁護士と、事件を立証する検事が主役である。

最近では、事件直後からその背景もわからないのに一方的に加害者をバッシングしたり、時には被害者を自業自得と決めつける風潮がある。識者と言われるコメンテーターも無責任な発言が多いし、SNSに至っては面白がって攻撃する。それも匿名で。

本作では、当事者たちの苦しみや葛藤を通して「赦す」という意味を、俳優陣の圧倒的な演技力で、観ている観客に突きつけている。

しかしながら、舞台となる裁判そのものの、リアリティのなさは弱点と言わざるを得ない。17歳の少年犯罪に懲役20年は疑問だし、量刑不当での再審もありえない。そもそも少年法に再審制度はないはずだ。裁判でいじめが考慮されないわけがないし、被害者の親と受刑者が直接2人だけで会うなどありえない。

テーマもよく演出力もあるだけに惜しい映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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