岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品いつかの君にもわかること B! 人の死に向き合い未来に希望を託した映画 2023年04月17日 いつかの君にもわかること © 2020 picomedia srl digital cube srl nowhere special limited rai cinema spa red wave films uk limited avanpost srl. 【出演】ジェームズ・ノートン、ダニエル・ラモント、アイリーン・オヒギンス 【監督・脚本】ウベルト・パゾリーニ 選択に後悔を残さないための時間の使い方 窓拭きの清掃員として働くジョン(ジェームズ・ノートン)は、4歳の息子マイケル(ダニエル・ラモント)とふたり暮らし。日々の食事の支度、身の回りの世話、託児所=幼稚園への送り迎えと、日常を滞りなく過ごす父子に見える。 とある家の窓拭きの作業中、ガラス越しに見えたその家の子供部屋。多分、歳も違うその部屋の主人の子供とマイケルのことを思い、ふと、寂しげな表情に変わるジョンがいる。 『いつかの君にもわかること』は、この父子家庭を描く映画だが、淡々とした描写の所々に、寂寥感が漂っている事に気づく。ジョンの置かれた状況、父子が辿るであろう未来への情報は、少しづつ小出しにされて、非日常的なものが意味するものを徐々に見せていく。 それはあたかも、幼いマイケルに今を、少し先の事を理解してもらう、緩やかなアプローチそのもののように見える。 父子が訪ねるのは見知らぬ家の夫婦。ぎこちない自己紹介を兼ねた、初対面の場は、まるで面接試験のような緊張感に包まれている。 こうした面談の場は複数、所々に繰り返し現れ、それが不可欠なものであることがわかってくる。その家はジョンの33歳という年齢よりも歳を重ねた夫婦であったり、母子の家庭であったりする。 それがソーシャルワーカーによって設定されたものであることが分かり、ジョンはそれに満足していない事を訴えるが、規則に則った手順を踏むことの重要性を強調される。苛立ちをあらわにする焦り、それには理由(わけ)があった。 あきらかな体調の悪さや病院通い、ジョンの置かれた現状が見え、その里親探しを急がねばならない理由があることが理解される。 監督は人の死を真摯に見つめた『おみおくりの作法』を手がけたウベルト・パゾリーニで、本作でもその視点は継続されている。 運命に悲観しその理不尽さへの怒りを無理に隠す事なく、終末を受け入れ、愛する子の未来に希望を託す。悲しくとも美しい映画である。 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 100% 観たい! (7)検討する (0) 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 2024年09月26日 / どら平太 日本映画黄金時代を彷彿とさせる盛りだくさんの時代劇 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 助けを求める人はもはや敵ではなく、ただの人間だ 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 海の男たちが下す決断を描くヒューマンドラマ more 2019年02月27日 / 延岡シネマ(宮崎県) 夏休み…映画館で買ってもらったお菓子の味を思い出す。 2020年02月05日 / 福知山シネマ(京都府) 城下町にある映画館は幅広い年代から支持されている 2023年03月08日 / Bunkamura ル・シネマ(東京都) 上質な映画を上質な空間で、贅沢な時間を過ごす。 more
選択に後悔を残さないための時間の使い方
窓拭きの清掃員として働くジョン(ジェームズ・ノートン)は、4歳の息子マイケル(ダニエル・ラモント)とふたり暮らし。日々の食事の支度、身の回りの世話、託児所=幼稚園への送り迎えと、日常を滞りなく過ごす父子に見える。
とある家の窓拭きの作業中、ガラス越しに見えたその家の子供部屋。多分、歳も違うその部屋の主人の子供とマイケルのことを思い、ふと、寂しげな表情に変わるジョンがいる。
『いつかの君にもわかること』は、この父子家庭を描く映画だが、淡々とした描写の所々に、寂寥感が漂っている事に気づく。ジョンの置かれた状況、父子が辿るであろう未来への情報は、少しづつ小出しにされて、非日常的なものが意味するものを徐々に見せていく。
それはあたかも、幼いマイケルに今を、少し先の事を理解してもらう、緩やかなアプローチそのもののように見える。
父子が訪ねるのは見知らぬ家の夫婦。ぎこちない自己紹介を兼ねた、初対面の場は、まるで面接試験のような緊張感に包まれている。
こうした面談の場は複数、所々に繰り返し現れ、それが不可欠なものであることがわかってくる。その家はジョンの33歳という年齢よりも歳を重ねた夫婦であったり、母子の家庭であったりする。
それがソーシャルワーカーによって設定されたものであることが分かり、ジョンはそれに満足していない事を訴えるが、規則に則った手順を踏むことの重要性を強調される。苛立ちをあらわにする焦り、それには理由(わけ)があった。
あきらかな体調の悪さや病院通い、ジョンの置かれた現状が見え、その里親探しを急がねばならない理由があることが理解される。
監督は人の死を真摯に見つめた『おみおくりの作法』を手がけたウベルト・パゾリーニで、本作でもその視点は継続されている。
運命に悲観しその理不尽さへの怒りを無理に隠す事なく、終末を受け入れ、愛する子の未来に希望を託す。悲しくとも美しい映画である。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。