岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

中国の農村を舞台にした新たなる傑作

2023年04月04日

小さき麦の花

©2022 Qizi Films Limited, Beijing J.Q. Spring Pictures Company Limited. All Rights Reserved.

【出演】ウー・レンリン、ハイ・チン
【監督】リー・ルイジュン

ぎこちないながらも徐々にお互いを受け入れていく

コロナ禍の中でも頑張っていた名演小劇場が、3月23日をもって休館した。名古屋市内の映画館でアート系の映画を定期的に上映するのは、ミッドランドスクエアシネマ、伏見ミリオン座、センチュリーシネマ、シネマスコーレ、シネマテークの5館だけになってしまった。

その影響もあってか、『小さき麦の花』は岐阜CINEXの方が名古屋より先に公開される。次週公開の『オマージュ』もCINEXの方が先だ。

私は『小さき麦の花』を観に日曜日に柳ケ瀬に来たが、柳ケ瀬グラッスル35のオープンや道三まつりの影響もあってか結構な人出であった。そんな喧騒の中のCINEXで観る名画は、また格別である。柳ケ瀬のシンボル的な映画館として絶対無くてはならないのだ。

その本作であるが、砂漠を含む必ずしも農業に適さない大地での営みを中心に、主人公2人と家族の一員であるロバを暖かく包み込むような陰影に富んだ人物描写で、静謐な中にも社会性をはらんだ現実を投射した傑作として、私のココロに深く突き刺さった。

兄からはバカにされている無口でおとなしい農家の四男ヨウティエ(ウー・レンリン)と、足が悪く失禁癖のある無口で内気なクイイン(ハイ・チン)。2人の意志に関係なく無理矢理結婚させられる。しかし逆らうでもなく、ぎこちないながらも徐々にお互いを受け入れていく姿は、私の胸にジーンと来る。

厄介者として蔑まれ、事実上家族から追い出された2人であるが、おかれた境遇を決して嘆いたりしていない。中国当局の空き家解消政策により住処を追い出されるが、2人は新居のためのレンガを作るところから始める。気の遠くなるような作業だが、彼らにとっては心地よい時間に感ずる。

交わす言葉も少なく大地に根ざした様子からは、どんな境遇におかれても、逞しく生き抜いていく素晴らしさを我々に呼び覚ましてくれるのだ。

中国の農村を舞台にした新たなる傑作である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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