岐阜新聞 映画部

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ユーモアがたっぷり塗された社会派ブラックコメディの傑作

2018年04月02日

スリー・ビルボード

©2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

【出演】フランシス・マクドーマンド、ウディ・ハレルソン、サム・ロックウェル、ジョン・ホークス、ピーター・ディンクレイジ
【監督】マーティン・マクドナー

アメリカ社会の可能性を信じ応援しているように感じる名作

 イギリスで劇作家として活躍するマーティン・マクドナーが5年ぶりに撮った『スリー・ビルボード』は、予想不能の展開が延々と続き、敬愛する北野武のように暴力的かつユーモアがたっぷり塗された社会派ブラックコメディの傑作である。
 映画は、3枚の看板を使って捜査へのいら立ちを直接的に表現する序盤のシーンからいきなり全速力のスタートだ。話は「レイプされて焼き殺された娘に対する社会への復讐」の筈だが、そうは問屋が卸さない。青のジャンプスーツにバンダナで戦闘モードの母ミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)は、街の有力者のどんな忠告にも耳をかさない。からかう奴には男女関係なく股間を蹴り上げる。名指しされた人望厚い警察署長(ウディ・ハレルソン)は、ある秘密を胸に予想外の行動を起こす。差別主義者で暴力的な若い巡査(サム・ロックウェル)は、マザコンのバカ警官だが、ある一件の際オレンジジュースで涙を流す。物語は、アカデミー賞にノミネートされたこの3人の行動が、一切の予定調和を見事に裏切り、考えもつかなかった終盤へとなだれ込む。
 この映画の舞台がミズーリ州だというのも意味がある。2014年に無抵抗の黒人少年を白人警官が射殺し、その後陪審員裁判で無罪となった事件。さらに大統領選ではいつも接戦というアメリカの縮図ともいえる中西部の州。リベラルとコンサバが拮抗する典型的な地域での、尖がったものへの反発と隠れた差別が嫌らしい。
3枚の看板は、3人の主要登場人物の生きざまにも繋がる。映画の前半、何度も執拗に看板の文字が書かれた表面が出てくるが、後半は何も書かれてない裏側からの描写が多くなる。ミルドレッドが現地に捧げる花も、赤一色から、色とりどりになってくる。人間の善も悪も併せ持つ多面性と希望が描かれており、外国人の監督がアメリカの社会に対して可能性を信じ応援しているように感ずる。名作。

『スリー・ビルボード』は全国で公開中。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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