岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

悪童たちが駆け回る、男の子ムービーの傑作

2023年03月27日

雑魚どもよ、大志を抱け!

©2022「雑魚どもよ、大志を抱け!」製作委員会

【出演】池川侑希弥(Boys be/関西ジャニーズ Jr.)、田代輝、白石葵一、松藤史恩、岩田奏、蒼井旬、坂元愛登、臼田あさ美、浜野謙太、新津ちせ、河井青葉/永瀬正敏
【監督】足立紳

日本の原風景、飛騨市のロケーションが素晴らしい

本作の舞台設定は架空の田舎町だが、ロケはオール飛騨市である。四方を山で囲まれた盆地で中央を川が流れ、ローカル線がコトコトと走る。そして一戸建て2階の家が多くてごみごみしてない街並み。町中を走り回る少年たちを手持ちカメラで追いかけても、現代を感じるような建物は出てこない。この日本の原風景のようなローケーションが素晴らしい。

時代設定は1988年(昭和63年)の3月頃。懐かしき昭和の最終盤でバブル真っただ中だが、この田舎町には恩恵はないようだ。

そして7人の少年たちは小学5年生。小学校の高学年って学力や体力の差が付き始める頃だが、私にとっては、親の目を盗んで友達どおしでいたずらしたり冒険したり、なんだか高揚感があった時期だ。

子どもは純真無垢で無邪気だなんて、この世の中には誰もいないのではないか?この7人の少年たちを、「弱虫」と決めつけることはできない。むしろ悪童だ。そして出てくる大人たちもひどい奴が多い。

駄菓子屋の婆あの暴言は容赦が無いし、その飼い猫を道路に放り投げる少年たちもとんでもない。学校の池にいるオオサンショウウオを釣り上げてしまったり、仲間のヤンキー姉ちゃんの匂いをかぎにいかせたり、やることなすこと滅茶苦茶だ。そして彼らは"逃げる"。清々しいほど一目散に走って逃げる。

子ども同士も大変だ。グループ間の権力争いにいじめやカツアゲ・・・

そんな少年たちの家庭環境も様々だ。乳がんの母、新興宗教にはまる母、人殺しの父、母子家庭、離婚をする両親。

この映画、ほぼ少年たちが主人公で大人たちは脇役だ。長回しのカメラで捉えられた少年たちは瑞々しく生き生きとしている。彼らが悩み、苦しみ、友だちを裏切ったり、助けてあげられなかったり、返り討ちにあったり、勇気が出せなかったり。そして仲間を信頼して勇気をふり絞ったり、別れがあったり。

男の子ムービーの傑作である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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