岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

亡くなった夫の謎に迫るミステリー

2023年03月21日

ある男

©2022「ある男」製作委員会

【出演】妻夫木聡、安藤サクラ、窪田正孝、清野菜名、眞島秀和、小籔千豊、坂元愛登、山口美也子、きたろう、カトウシンスケ、河合優実、でんでん、仲野太賀、真木よう子、柄本 明
【監督・編集】石川慶

消したかった過去消さなければならなかった私

出会い…

とある山あいの村にある文具店。雨の日、ふらりと立ち寄った男(窪田正孝)。店番をする女(安藤サクラ)。客と店の者という関係が次第に変化する過程。ペン、スケッチブック、写生する男を目撃する。店で交わされる世間話。女の過去。離婚、子ども、実家。

ふたりは接近し結ばれる。男は近くの木工所で働く谷口大祐…流れ者。女は里枝…離婚し実家の文具店に出戻って来た。

時は過ぎ、結婚後、新たな子ども誕生し、里枝の子・悠人とも良好な親子関係が築かれている。幸せそうに見える4人家族。

そして、唐突に訪れる別れ…

樹木伐採の現場の事故で、大祐は里枝と子ども2人を残し亡くなってしまう。

『ある男』は芥川賞作家平野啓一郎の同名小説の映画化で、監督は『蜜蜂と遠雷』(2019)で毎日映画コンクールで大賞を受賞、今やその新作が大きな期待を寄せる石川慶が務めている。ふたりは共に愛知県東三河出身で、年齢も2つ違い(石川監督が2つ年下)である。

夫喪失から立ち直れずにいたある日、大祐の兄が訪ねて来るが、遺影を見た兄・恭一のひと言に驚愕する…「この写真は大祐ではない」。

その事態に里枝が助けを求めたのは、かつて仕事を依頼したことのある弁護士の城戸(妻夫木聡)だった。"亡くなった夫の身元調査" という畑違いの依頼に、はじめは戸惑った城戸だったが、次第に "ある男" の謎に引き込まれて行く。

物語はミステリアスに進行する。男の過去を辿る過程、関わった人の繋がりが明らかになり、大祐を名乗っていた男の別の顔が浮かび上がる。

警察の統計によれば、日本では年間8万人及ぶ行方不明者が発生している。これはあくまでも、届出のあった数にすぎず、実数はさらに多いと想像できる。姿を消す人、その事情は様々で、一括りには出来ないが、この物語で明らかになる真実、哀しみを持って訴えかけて来る "ある男" の覚悟は、観るものの心に響く。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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