岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品コンパートメントNo.6 B! 孤独な留学生のロードムービー 2023年03月14日 コンパートメントNo.6 © 2021 - AAMU FILM COMPANY, ACHTUNG PANDA!, AMRION PRODUCTION, CTB FILM PRODUCTION 【出演】セイディ・ハーラ、ユーリー・ボリソフ、ディナーラ・ドルカーロワ 【監督・脚本】ユホ・クオスマネン 目指すのは世界最北端にある恋人といるはずだった場所 フィンランド人留学生ラウラ(セイディ・ハーラ)は不機嫌だった。 モスクワにある家では知った顔が集うパーティーが開かれている。そこはラウラが慕う大学教授イリーナの家で、彼女はラウラの恋人でもある。ロシア語が行き交い会話に加わることも出来ない、異国人のラウラには甚だ着心地が悪かったし、楽しみにしていた旅行を直前に恋人からキャンセルされたことが、彼女を塞ぎ込ませる最大の原因だった。 『コンパートメントNo.6』は、ラウラの旅、モスクワの遥か北、世界最北端の駅ムルマンスクへの列車行を描くロードムービーである。 時代設定は明示されないが、諸々の環境が示すところ1990年代。ラウラはモスクワ駅発の寝台列車に乗り込む。旅の目的は古代のペトログリフ=岩面彫刻を見ること。 指定の個室 "6号室=コンパートメントNo.6" には、酒瓶をテーブルに並べて既に出来上がってしまっている若い男リョーハ(ユーリー・ボリソフ)がいた。一方的に自己紹介するリョーハは、行先は同じムルマンスクで、その目的は仕事場の炭鉱だとわかる。その粗野な振舞いに苛立つラウラは、代わりの座席を求めて列車内を彷徨うが、長旅の為の安住の場所は見つかるはずも無い。狭い窮屈な車内に閉じ込められたラウラの淋しい心はいっそう塞ぎ込むのだった。 旅の映画と言えば、ロマンチックな雰囲気を思い浮かべがちだが、本作にはそれは無い。乱雑な車内、横柄な車内乗務員、狭い個室で面と向かう事になるのは、周りを気遣う事とは無縁の酔っぱらい。車窓に映るのは殺伐とした雪景色。ラウラの孤独は増幅強調されて行く。 日本人には理解し難いロシアの列車運行が面白い。駅での停車時間は長時間に及び、とある駅では一晩を過ごす事になる。 個室や食堂車での会話、リョーハのちょっとした振舞い。そこにラウラの孤独を癒す瞬間が訪れる。決して劇的ではない不思議な感傷旅行は、あなたの心に届くだろうか? 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 100% 観たい! (9)検討する (0) 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 2023年09月25日 / ふたりのマエストロ 笑って泣けて共感できる「予定調和」の映画 2023年09月20日 / 658km、陽子の旅 回帰を模索する苦辛のロードムービー 2023年09月20日 / 658km、陽子の旅 引きこもりのフリーターがヒッチハイクで旅をする more 2018年10月24日 / パルシネマしんこうえん(兵庫県) 神戸の下町で、館主こだわりの二本立てに興じる 2021年04月28日 / Denkikan(熊本県) 九州で初めて活動写真の灯をともした老舗映画館 2020年04月01日 / シネポート CINEPORT(宮崎県) 宮崎と鹿児島の県境にある街にひとつの映画館 more
目指すのは世界最北端にある恋人といるはずだった場所
フィンランド人留学生ラウラ(セイディ・ハーラ)は不機嫌だった。
モスクワにある家では知った顔が集うパーティーが開かれている。そこはラウラが慕う大学教授イリーナの家で、彼女はラウラの恋人でもある。ロシア語が行き交い会話に加わることも出来ない、異国人のラウラには甚だ着心地が悪かったし、楽しみにしていた旅行を直前に恋人からキャンセルされたことが、彼女を塞ぎ込ませる最大の原因だった。
『コンパートメントNo.6』は、ラウラの旅、モスクワの遥か北、世界最北端の駅ムルマンスクへの列車行を描くロードムービーである。
時代設定は明示されないが、諸々の環境が示すところ1990年代。ラウラはモスクワ駅発の寝台列車に乗り込む。旅の目的は古代のペトログリフ=岩面彫刻を見ること。
指定の個室 "6号室=コンパートメントNo.6" には、酒瓶をテーブルに並べて既に出来上がってしまっている若い男リョーハ(ユーリー・ボリソフ)がいた。一方的に自己紹介するリョーハは、行先は同じムルマンスクで、その目的は仕事場の炭鉱だとわかる。その粗野な振舞いに苛立つラウラは、代わりの座席を求めて列車内を彷徨うが、長旅の為の安住の場所は見つかるはずも無い。狭い窮屈な車内に閉じ込められたラウラの淋しい心はいっそう塞ぎ込むのだった。
旅の映画と言えば、ロマンチックな雰囲気を思い浮かべがちだが、本作にはそれは無い。乱雑な車内、横柄な車内乗務員、狭い個室で面と向かう事になるのは、周りを気遣う事とは無縁の酔っぱらい。車窓に映るのは殺伐とした雪景色。ラウラの孤独は増幅強調されて行く。
日本人には理解し難いロシアの列車運行が面白い。駅での停車時間は長時間に及び、とある駅では一晩を過ごす事になる。
個室や食堂車での会話、リョーハのちょっとした振舞い。そこにラウラの孤独を癒す瞬間が訪れる。決して劇的ではない不思議な感傷旅行は、あなたの心に届くだろうか?
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。