岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

最悪な出会いの二人が、素敵な恋に落ちるまで

2023年03月14日

コンパートメントNo.6

© 2021 - AAMU FILM COMPANY, ACHTUNG PANDA!, AMRION PRODUCTION, CTB FILM PRODUCTION

【出演】セイディ・ハーラ、ユーリー・ボリソフ、ディナーラ・ドルカーロワ
【監督・脚本】ユホ・クオスマネン

「くたばれ」って、愛の言葉?

かつて日本でも寝台列車は、長距離移動の主役であった。なかでも寝台特急は「ブルートレイン」と呼ばれ憧れの乗り物であり、隠れ鉄っちゃんの私も「あけぼの」や「日本海」に乗ったときは興奮した。

しかし「新幹線網の発達・格安航空会社の出現・コスパに見合わぬ運送コストの高さ」等を理由にして夜行寝台は激減。定期列車として残っているのは、東京と高松・出雲市を結ぶ「サンライズ瀬戸・出雲」のみである。

鉄っちゃんとしては、まずは寝台列車に注目だ。モスクワから北上すること2,090km、北極圏最大の街ムルマンスクへ35時間かけて向かうアルクチカ号は、日本からのツアーもある。コンパートメントに乗ってフィンランド人女性とアバンチュール?を夢想するのも楽しいのだ。

映画の時代設定は1990年代のロシア。ソ連崩壊、チェチェン紛争、ルーブル大暴落と超インフレの「激動の90年代」。新興財閥が現れマフィアが跋扈した時代だ。

本作はそんな頃、モスクワに留学して考古学を学ぶフィンランド人女性ラウラ(セイディ・ハーラ)と、行動はガサツだが意外に純な労働者階級のリョーハ(ユーリー・ボリソフ)のボーイミーツガールムービーだ。最悪の出会いで始まった性格の異なる男女が、いがみ合いながらやがて恋に落ちるという設定はスクリューボールコメディのようでもある。

定型ロマンスではあるが、ロシアの美しい風景の中を疾走する寝台列車と鉄ヲタのココロをくすぐるコンパートメントは見て楽しく、気の利いたセリフとほどよいすれ違いの構成や主演2人の素晴らしい演技で、この映画を傑作の域まで高めている。

古代のペトログリフ(岩面彫刻)を見るという目的を達成する2人。冒頭リョーハから「フィンランド語で愛してるって何というんだ?」と聞かれ、ラウラは「くたばれ」という意味の単語を教える。これが素敵なラストに繋がるのだが、それは観てのお楽しみ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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