岐阜新聞 映画部

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ユダヤ人虐殺を加速させた会議の映画化

2023年03月07日

ヒトラーのための虐殺会議

© 2021 Constantin Television GmbH, ZDF

【出演】フィリップ・ホフマイヤー、ヨハネス・アルマイヤー、マキシミリアン・ブリュックナー
【監督】マッティ・ゲショネック

イエスマンしかいない空々しさに背筋が凍る

ラインハルト・ハイドリヒは、1904年ドイツ帝国の領国だったプロイセン王国に生まれた。海軍兵学校を卒業後、国民社会主義ドイツ労働党=ナチスの組織である親衛隊に入隊した。

アドルフ・アイヒマンは、1906年ドイツ帝国西部の都市ゾーリンゲンで生まれた。幼少期は父親の仕事の関係でオーストリアで育つ。家庭は事業の失敗などで裕福とは言えず、早くから会社勤めをしたが、やがてオーストリアのナチ党に入党、その後親衛隊に入隊。叩き上げで頭角を現した人物である。

『ヒトラーのための虐殺会議』は、1942年1月20日に、ドイツ・ベルリンにある大邸宅の一室で行われた会議の様子を描いた映画である。 邸宅はヴァンゼー湖畔にあり、「ヴァンゼー会議」と命名された。その時の議事録はアイヒマンによって記録された。映画はその議事録に基づいて描かれる。

会議にはナチスの高官15名と女性秘書1名が参加した。議題は「ユダヤ人問題の最終的解決」、議長はハイドリヒだった。

ハイドリヒは会議の前年、ヒトラーによりベーメン・メーレン保護領=チェコの副総監に任ぜられ、期待通りの卓越した行政手腕を発揮した。その手法は "金髪の野獣" と渾名される冷酷なものだった。ナチスでの地位はヒムラーに次ぐナンバー3にあり、その野心はさらにその上にあったとされる。

議題にある最終的解決は、ヨーロッパにいるユダヤ人を抹殺することを意味する。そしてそれは会議前に既成事実化されていたことで、あらかじめ用意されていたシナリオにそったもののように淡々と進行する。ユダヤ人は労働力ではあっても人としては見ていない。始末とか迅速な対応とか、まるで合理化を進める何処かの会社の会議の様。そして僅か90分で終了する。

議長のハイドリヒは会議の半年後、プラハで暗殺される。決定されたユダヤ人の移送、強制収容、計画的な殺害を主導したのはアイヒマンだった。彼は終戦後、イスラエルで絞首刑となった。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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