岐阜新聞 映画部

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シベリア抑留の事実を知るための映画

2023年02月13日

ラーゲリより愛を込めて

©2022映画「ラーゲリより愛を込めて」製作委員会 ⓒ1989 清水香子

【出演】二宮和也、北川景子、松坂桃李、中島健人、寺尾聰、桐谷健太、安田顕 ほか
【監督】瀬々敬久

敗者は語ってはいけないのか?

第二次世界大戦敗戦後、米軍は広く日本に駐留し占領下に置いた。空襲で焼野原となった地を復興へ導く助力としての善行。駐留する兵士たちの常道を逸した蛮行。語られるのは、美化されすぎた光と、「戦争に負けるというのはそういう事」という諦観が込められた影。

忘れ去れつつある「岸壁の母」は、ソ連によって抑留されて戻らぬ子のことを思う母親の心情を歌い、1954(昭和29)年にリリースされた歌謡曲。この歌詞にはモデルとなった端野いせという人物が存在する。彼女は消息を絶った息子の帰りを、引き揚げ船が到着する港・舞鶴で待ち続けた。

これはあくまでも個人的な意見だが、敗戦後の話は "南" に偏っているという印象がある。実録を交えた文学でも、それに材をとった映画や演劇でも…。中国北部満洲どまり。香月泰男の絵や石原吉郎の詩はあっても、シベリア抑留のことは片隅に忘れさられてはいまいか?

第二次世界大戦敗戦後、武装解除され投降した日本兵や一部民間人は、ソビエト連邦によって、シベリア地域をはじめとしたソ連各地に強制連行された。ソ連軍に占領された満洲、朝鮮北部、南樺太、千島列島から抑留された人々は総数57万5千人に及んだ。

『ラーゲリより愛を込めて』は、シベリアの強制収容所で過酷な生活を強いられた日本兵捕虜たちの姿を、そのひとり山本幡男(二宮和也)を中心にして描く実録ドラマである。

原作は辺見じゅんのノンフィクション「収容所(ラーゲリ)から来た遺書」。映画で描かれる山本幡男は学びを交えて周囲を励まし、絶対的な絶望からの離脱を試みた人として描かれる。彼がロシア語を使えるインテリであることを理由に、スパイ容疑をかけられるその裏は明確には語られないが、ドラマを主導する人物像は鮮明に見える。

明らかなポツダム宣言に反する不当行為に対して、日本の政府は何をしたか…抑留による死者は5万8千人。忘れてはいけない。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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