岐阜新聞 映画部

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西日本豪雨災害を扱った、日本映画の"感動作"

2023年02月14日

とべない風船

©buzzCrow Inc.

【出演】東出昌大、三浦透子、小林薫、浅田美代子、原日出子、堀部圭亮、笠原秀幸、有香、中川晴樹、柿辰丸、根矢涼香、遠山雄、なかむらさち
【監督・脚本】宮川博至

結論は見え見えだが、悪口は力作だからこその注文

私は2011年3月11日に発生した東日本大震災をきっかけに、勤めていた地図会社の仲間と一緒に地図と防災を結びつけたNPOを発足、2012年から防災のボランティア活動を行っている。

2018年7月に発生した"西日本豪雨"では、西日本を中心に、河川の氾濫・浸水害・土砂災害等が発生し、全国で死者237名、行方不明者8名の大災害となった。

その土砂災害をテーマにし、豪雨で家族を失い心を閉ざした漁師が主人公の"感動作"というふれこみの上、30数年来毎月通っている映画サークルの課題映画という事もあり、それ以上の情報を入れずに観た。

実はそのサークルの定例会では、相当な悪口を言ってしまった。"防災をお涙頂戴の道具にしている"とか"日本映画の悪いところが全部入っている"とかだ。

災害で妻子を亡くし、その責め苦を義理の父(堀部圭亮)から一方的に受ける漁師の憲二(東出昌大)。そういう人は寡黙に孤独に生きていけと決めつけられている気がしてしょうがない。

土砂災害時、自分一人で土砂を掘って妻子の手を見つけるくだりなど、どう考えても実際有り得ない状況なので、それで"悲しめ!"と言われてもシラケるばかりだ。

そして心の中の気持ちを、全てセリフで言わせている点。なかでも憲二に辛く当たる理由を、義父がモノローグで語るシーン。憲二が都合よくその場に居合わせ影からこっそり聞いている!そして義父の本当の気持ちを知る!これがお芝居ならいいが、映画となると滑稽この上なく見えてしまうのだ。

心情を全てセリフで説明してくれる上、この映画のテーマを表す黄色い風船の存在。『幸福の黄色いハンカチ』へのオマージュだと思うが、最初からあまりに露骨すぎて結論が見え見えだ。

と悪口を書き連ねたが、"西日本豪雨"災害を全国に知らしめようとした宮川博至監督の志は誠に尊く応援したくなる。悪口は力作だからこその注文である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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