岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

完成度の高い脚本と絶妙な配役の壮絶な愛憎劇

2018年03月27日

犬猿

©2018『犬猿』製作委員会

【出演】窪田正孝、新井浩文、江上敬子、筧美和子
【監督・脚本】𠮷田恵輔

もっと高く評価されていい𠮷田恵輔監督の最新作

 𠮷田恵輔監督の作品は全作面白い。しかも、漫画やベストセラー小説の映画化がほとんどの日本映画にあって、自ら書いたオリジナル脚本の作品が多いのが凄い。人間の誰にでもあるどうしようもない無様な部分を、時には滑稽に、時にはシンパシーを持って描く振り幅の大きな作風が魅力。笑わせられながらも、自分にも心当たりのある言動や行動に時折笑いが引きつってしまう。登場人物の心理を的確に反映させたダイアローグ、魅力的なキャラクターの造形、そして巧妙に伏線の張られた先の読めないストーリー展開の妙。現在の日本映画界にあって、もっと高く評価されていい才能だ。
 『犬猿』は、𠮷田恵輔の4年ぶりのオリジナル脚本の映画化。何から何まで正反対の兄弟と姉妹の愛憎を描いており、コメディとシリアスドラマが同居した完成度の高い脚本と絶妙な配役による彼ならではの傑作。傍若無人な乱暴者の兄(新井浩文)と真面目で気の弱い弟(窪田正孝)。頭が良くて仕事もできるがブスで太った姉(江上敬子)とルックスは良いがバカで仕事もできない妹(筧美和子) 。彼らそれぞれが嫉妬と羨望に心かき乱され愛と憎しみが複雑に交錯する、断ち切れない面倒な関係を見事に描き尽くしていて唸らせられる。4人の俳優も見事にはまっていて申し分ない。特にお笑いコンビ「ニッチェ」の江上敬子の好演が光る。

『犬猿』は全国で公開中。

語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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