みんなで一喜一憂した思い出は金額じゃない

私はギャンブルには基本興味ないが、中央競馬だけは一時はまった事がある。PATに加入して賭ける事もしたがその額は小遣い程度であり、予想のための競馬ブック代の方が高く付いたくらいだ。それでもやっていたのは、競馬にはロマンがあったからだ。

お馬さんのスーパーヒーロー"オグリキャップ"。郡上八幡出身の小栗孝一さんが馬主で、地方競馬の岐阜笠松競馬でデビュー。連戦連勝を重ね1988年中央競馬に移籍。暮れの有馬記念では芦毛馬初の優勝を果たした。その後のG１レースでは、マイルCS、安田記念を制したもの、続くレースでは大敗。そして1990年の有馬記念で奇跡の復活を果たすという、人気と実力を併せ持ったまさにドリームホースであった。

本作は近代競馬発祥の地イギリスで、ウェールズの労働者20人が結成した組合馬主の所有するドリームアライアンスが、エリート馬たちに混ざって戦い勝利するという競馬ドリームムービーである。

このサクセスストーリーが痛快で夢があるのは、富裕層や貴族階級が血統の良い自己所有馬を半ば道楽で走らせて楽しむ競馬の世界に、庶民が所有する安い馬が参入し勝ってしまったからに他ならない。

映画はその過程をイギリスの人情噺風にベタに描いていく。実話なのでしょうがない気もするが毒の部分が薄口で、成功者の自慢話風にみえてしまうのは残念だ。まあこれは私の嫉妬なのだが。

この馬の収支決算は以下の通り（1ポンド160円換算） 　
繁殖牝馬代　　　　　　 56,000円 　
種付け代　　　　　　　 320,000円 　
共同馬主代　　　1人年間 83,200円 　
生涯獲得賞金　　　　22,000,000円　 　
出資者配当金　　　　　 230,000円

リターンは少ないが、みんなで一喜一憂した思い出は金額ではない。レースで興奮し、勝ってはしゃいだパブでの祝勝会。そこには数万ポンドの価値がある。