岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品非常宣言 B! サスペンス映画としても群像劇としても一級品 2023年01月27日 非常宣言 © 2022 SHOWBOX AND MAGNUM9 ALL RIGHTS RESERVED. 【出演】ソン・ガンホ、イ・ビョンホン、チョン・ドヨン、キム・ナムギル、イム・シワン、キム・ソジン、パク・ヘジュン 【監督】ハン・ジェリム リアルさとケレン味の匙加減が絶妙な娯楽大作 近年のエンタテインメント作品は、実話の映画化かアメコミに代表されるリアリティとは無縁な荒唐無稽な作品ばかりで、リアリティのある面白いフィクションが激減している。昨年話題になったインド映画「RRR」も、クライマックスの連続で3時間の上映時間を長く感じさせないサービス精神に驚かされたものの、荒唐無稽でリアルな緊迫感には欠けていた。その点ではアメコミのスーパーヒーロー物と大差なかった。 そんな中、クオリティの高い娯楽映画を量産している韓国映画から現れた、航空機を舞台にしたバイオテロを描いた「非常宣言」は、リアルさとケレン味の匙加減が絶妙な、フィクションの面白さを満喫させてくれるエンタテインメント作品であった。特に終盤の悲壮感漂う展開は、傑作「新感染 ファイナルエクスプレス」を想起させる。 脚本がよく練られていて、豪華キャストも無駄遣いされていない。テロの標的となった航空機に搭乗している妻の身を案じる刑事(ソン・ガンホ)の必死の捜査。ある事故が原因でパイロットを辞めた男(イ・ビョンホン)と副操縦士(キム・ナムギル)との因縁、難しい対応を迫られる国土交通大臣(チョン・ドヨン)の決断。 地上のソン・ガンホと機内のイ・ビョンホンの両主役の関係は、「タワーリング・インフェルノ」のスティーブ・マックイーンとポール・ニューマンを連想させる。 リアルな視覚効果と二転三転するストーリー展開。ポリティカル・サスペンスとしても、群像劇としても一級品の娯楽大作である。多少強硬な展開を疑問視する方もあろうが、ご都合主義はフィクションに付き物であり、必要以上にリアリティを求めすぎると現実味のあるフィクションはますます作れなくなるだろう。 監督・脚本はハン・ジェリム。 語り手:井上 章映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。 89% 観たい! (8)検討する (1) 語り手:井上 章映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。 2024年03月27日 / COUNT ME IN 魂のリズム ドラムを主役にした音楽ドキュメンタリー 2024年03月27日 / COUNT ME IN 魂のリズム 全編ドラム愛に満ち溢れた、身体で感じられる音楽映画 2024年03月26日 / 瞳をとじて 時と記憶をたどる哀しくとも美しい物語 more 2021年09月08日 / 【思い出の映画館】浅草東宝(東京都) 大晦日は浅草寺に詣でてオールナイトで年を越す 2020年06月03日 / 小倉昭和館(福岡県) 戦前から幾多の苦難を乗り越えた街にひとつの映画館 2022年04月27日 / 天文館シネマパラダイス(鹿児島県) かつての映画街の熱気を再び…商店街が立ち上がった。 more
リアルさとケレン味の匙加減が絶妙な娯楽大作
近年のエンタテインメント作品は、実話の映画化かアメコミに代表されるリアリティとは無縁な荒唐無稽な作品ばかりで、リアリティのある面白いフィクションが激減している。昨年話題になったインド映画「RRR」も、クライマックスの連続で3時間の上映時間を長く感じさせないサービス精神に驚かされたものの、荒唐無稽でリアルな緊迫感には欠けていた。その点ではアメコミのスーパーヒーロー物と大差なかった。
そんな中、クオリティの高い娯楽映画を量産している韓国映画から現れた、航空機を舞台にしたバイオテロを描いた「非常宣言」は、リアルさとケレン味の匙加減が絶妙な、フィクションの面白さを満喫させてくれるエンタテインメント作品であった。特に終盤の悲壮感漂う展開は、傑作「新感染 ファイナルエクスプレス」を想起させる。
脚本がよく練られていて、豪華キャストも無駄遣いされていない。テロの標的となった航空機に搭乗している妻の身を案じる刑事(ソン・ガンホ)の必死の捜査。ある事故が原因でパイロットを辞めた男(イ・ビョンホン)と副操縦士(キム・ナムギル)との因縁、難しい対応を迫られる国土交通大臣(チョン・ドヨン)の決断。
地上のソン・ガンホと機内のイ・ビョンホンの両主役の関係は、「タワーリング・インフェルノ」のスティーブ・マックイーンとポール・ニューマンを連想させる。
リアルな視覚効果と二転三転するストーリー展開。ポリティカル・サスペンスとしても、群像劇としても一級品の娯楽大作である。多少強硬な展開を疑問視する方もあろうが、ご都合主義はフィクションに付き物であり、必要以上にリアリティを求めすぎると現実味のあるフィクションはますます作れなくなるだろう。
監督・脚本はハン・ジェリム。
語り手:井上 章
映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。
語り手:井上 章
映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。