岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

「三方よし」を描く、ちょんまげエンタテイメント

2023年01月05日

近江商人、走る!

©️2022 KCI LLP

【出演】上村 侑、森永悠希、真飛 聖、黒木ひかり、前野朋哉、田野優花、村田秀亮(とろサーモン)、鳥居功太郎、たむらけんじ、大橋彰(アキラ 100%)、高梨瑞樹、徳江かな、落合亜美、飯田周平、コウメ太夫、矢柴俊博、堀部圭亮、渡辺裕之(特別出演)、藤岡弘、(特別出演)/筧 利夫
【監督】三野龍一

情報は金になる、銀次は近江商人の見本だ

本作は、近江商人の心得である「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よし」を描いた、会社の社長室に貼ってあるような「社是の再現時代劇」である。

かつては人材育成や将来の事業のためにお金を払ってきた日本の会社だったが、新自由主義経済導入以降、短期利益の確保や株主最優先経営がもてはやされ、結果国際競争力が失われ20数年間賃金が上がらない安い国になってしまった。

そんな風潮に一石を投じ、どんな逆境の下でも創意工夫によって事態は打開できるのだと実践的に示した映画だ。

戦乱が無く他国の影響もほぼ無かった江戸時代、日本では今に繋がる経済の基礎的な仕組みが出来てきていた。

そんな頃の近江の国大津にある米問屋大善屋で丁稚奉公する銀次(上村侑)が主役。彼は先を見通す判断力と、他者の利益を考え顧客の幸福も追求したまさに近江商人の見本となるような商才で活躍していた。

映画はこの銀次のアイデアを、面白おかしくわかりやすく描いていく。江戸時代が舞台なのでちょん髷はしているが、言葉遣いは現代風でミュージカルシーンもあり、リアリズムよりも楽しさを追及したちょんまげエンタテイメントになっている。

さらに正義のお店に対する、近江商人の心得から外れたお店、悪の権化の大津奉行という勧善懲悪パターンは、娯楽映画の王道だ。

各地の年貢米が集積する大坂堂島米会所。そこでは現物に代わって米切手という証券化されたもので取引される。この大坂での米相場が全国の基準となっていくわけだが、その情報をいち早く知れば価格差で利益が生まれる仕組み。つまり大津で安く仕入れた米を堂島で高く売ればいいのだ。

堂島価格を米飛脚よりも速く知らせた旗振り通信というアイデアは史実のようだが、実際に再現させてみると画期的で凄い仕組みだと得心できる。

情報の速さ正確さと判断力・決断力。これに「三方よし」が加われば鬼に金棒なのだ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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