岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品シスター 夏のわかれ道 B! 少女が背負うことになる家族のお荷物 2022年12月26日 シスター 夏のわかれ道 © 2021 Shanghai Lian Ray Pictures Co.,Ltd. All Rights Reserved 【出演】チャン・ツィフォン、シャオ・ヤン、ジュー・ユエンユエン、ダレン・キム 【監督】イン・ルオシン 一人っ子政策の歪みとしたたかな選択 看護師として働くアン・ラン(チャン・ツィフォン)は、医師になるため、北京の大学院への進学を目指していた。 ある日、疎遠となり離れて暮らす両親が交通事故に遭遇したと知らせを受ける。 『シスター 夏のわかれ道』は、自らの夢を叶えるため、健気に生きる少女に、突然突きつけられる運命の強制転換の時を見つめた映画である。 中国の所謂 "一人っ子政策" は、文字どおり、一組の夫婦につき子どもは1人とする産児制限政策のことで、1979年頃から始まったとされる。 国ごとのの出生率は、何らかの原因(戦争とか大規模な天災)で著しく低下した反動で揺り戻しを繰り返すとされる。中国では60年代半ばごろから第2次のベビーブームが到来し、出生率は高まり、70年には史上最高の純増期をむかえていた。 1971年の初め、周恩来首相の提唱で、"計画出産活動" が始動した。当時の政権が感じていたのは、食糧生産の伸び率が人口増加に追いつかない、来るべき食糧不足への危機感が台頭したことによる。 アン・ランの両親はあっけなく亡くなってしまい、その後には、会ったこともない弟ズーハン(ダレン・キム)が遺されたことを知る。両親が望んだ長男はたっぷりの愛情を注がれ、わがまま放題に育った男の子だった。 親戚の面々は、口裏を揃えて、実の姉が弟の面倒をみることが当たり前だと押しつけてくる。そのためには夢をあきらめることも当然だという一方的な言い分。アン・ランは仕方なく弟を引き取る。 両親の死すら理解できていないズーハンは、純真無垢=傍若無人な怪獣でしかない。アン・ランの日常はかき回される。そんな時、思いは両親への憎しみに向かう。アン・ランの身勝手とさえ思える行動の裏にある確執の原因が徐々に明らかになる。ようやく見つけた里親に弟を引き渡すことになるのだが…。 本作は中国で大ヒットを記録した。一人っ子政策が生んだ歪みを示唆する内容でありながら、観客から共感を引き出し、批判による検閲を回避する絶妙のバランス。含みのある結末も意味深だ。 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 100% 観たい! (7)検討する (0) 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 2024年04月24日 / ピアノ・レッスン 4Kデジタルリマスター 4Kで甦る 憎悪の泥に塗れた官能的な愛の物語 2024年04月24日 / ピアノ・レッスン 4Kデジタルリマスター ジェーン・カンピオン監督の最高傑作、完璧な作品 2024年04月24日 / RED SHOES/レッド・シューズ オーストラリア発バレエ舞台の成長物語 more 2021年03月17日 / 盛岡ピカデリー/ルミエール(岩手県) 東北の城下町にある市民が愛した小さな映画館 2023年10月11日 / シネマハウス大塚(東京都) かつての映画青年たちが集まって立ち上げた映画館 2019年11月27日 / 前橋シネマハウス(群馬県) 今まで手つかずだった休館した映画館に再び映画の灯が… more
一人っ子政策の歪みとしたたかな選択
看護師として働くアン・ラン(チャン・ツィフォン)は、医師になるため、北京の大学院への進学を目指していた。
ある日、疎遠となり離れて暮らす両親が交通事故に遭遇したと知らせを受ける。
『シスター 夏のわかれ道』は、自らの夢を叶えるため、健気に生きる少女に、突然突きつけられる運命の強制転換の時を見つめた映画である。
中国の所謂 "一人っ子政策" は、文字どおり、一組の夫婦につき子どもは1人とする産児制限政策のことで、1979年頃から始まったとされる。
国ごとのの出生率は、何らかの原因(戦争とか大規模な天災)で著しく低下した反動で揺り戻しを繰り返すとされる。中国では60年代半ばごろから第2次のベビーブームが到来し、出生率は高まり、70年には史上最高の純増期をむかえていた。
1971年の初め、周恩来首相の提唱で、"計画出産活動" が始動した。当時の政権が感じていたのは、食糧生産の伸び率が人口増加に追いつかない、来るべき食糧不足への危機感が台頭したことによる。
アン・ランの両親はあっけなく亡くなってしまい、その後には、会ったこともない弟ズーハン(ダレン・キム)が遺されたことを知る。両親が望んだ長男はたっぷりの愛情を注がれ、わがまま放題に育った男の子だった。
親戚の面々は、口裏を揃えて、実の姉が弟の面倒をみることが当たり前だと押しつけてくる。そのためには夢をあきらめることも当然だという一方的な言い分。アン・ランは仕方なく弟を引き取る。
両親の死すら理解できていないズーハンは、純真無垢=傍若無人な怪獣でしかない。アン・ランの日常はかき回される。そんな時、思いは両親への憎しみに向かう。アン・ランの身勝手とさえ思える行動の裏にある確執の原因が徐々に明らかになる。ようやく見つけた里親に弟を引き渡すことになるのだが…。
本作は中国で大ヒットを記録した。一人っ子政策が生んだ歪みを示唆する内容でありながら、観客から共感を引き出し、批判による検閲を回避する絶妙のバランス。含みのある結末も意味深だ。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。