岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

theater somewhere

映画を送り続けて半世紀…北の都の老舗劇場が幕を降ろす

2019年05月08日

ディノスシネマズ札幌劇場(北海道)

【住所】北海道札幌市中央区南3条西1丁目8番地
【電話】011-221-3802
【座席】スクリーン1:223席 スクリーン2:107席 スクリーン3:94席 スクリーン4:39席 スクリーン5:59席 スクリーン6:41席

 今年の春先に発表されたニュースに衝撃を受けた。半世紀もの間、札幌の中心部でハリウッド大作からアート、クラシックに至るまで世界各国の映画を送り続けてきた映画館「ディノスシネマズ札幌劇場(旧称:スガイシネプレックス札幌劇場)」が、6月2日をもって閉館するという。現在、映画館のあるディノス札幌中央ビルは、以前は須貝ビルという名称で、高校まで札幌に住んでいた僕としては、映画と言えば須貝ビルだった。そのビルにある映画館が、平成から令和に変わるこの年に幕を降ろす。

 前身は大正7年創業の芝居小屋「札幌座」。戦後、1150席を有する映画館「札幌劇場」となってから今日に至るまで、北海道の興行史において一時代を築いてきた。テレビの台頭によって映画の斜陽が囁かれていた昭和43年に大型複合レジャー施設(サウナ・ボウリング場・ビリヤード・卓球・ゴーゴーなどが入った)須貝ビルを設立。その7階に客席数800席、70ミリ上映設備を完備する大劇場「札幌劇場」をオープンしたのは、ある意味大きな賭けだったであろう。

 やがて時代はハリウッド大作全盛期に突入、大スクリーンに映し出される『タワーリング・インフェルノ』や『エクソシスト』『ジョーズ』『E.T.』などの話題作に多くの市民が熱狂した。

 昭和49年には、下火となったボーリング場を次々と映画館に改装し、500席の「札幌グランドシネマ」や、中規模クラスの「シネマ5」と「シネマロキシー」をオープンさせた(僕は勝手に双子の映画館と呼んでいた)。学生の僕にとってありがたい存在だったのは、地下にあった客席70〜100席ほどの5つの小規模な映画館だった。上の階でロードショーが終わったムーブオーバー作品を一律500円で観る事ができたので、見逃してしまった映画が掛かると、学校帰りに小銭を握りしめて駆け込んだものだ。まるで、穴蔵のような地下の映画館で観た『ミスター・グッドバーを探して』を今でも鮮明に覚えている。

 須貝ビルにあった映画館の変遷は、昭和における映画興行の歴史そのものだ。一般作品に観客が入らなくなると狭いスペースに洋ピン(洋画ポルノ)専門館を作ったり、安く映画を観られる小さな映画館を作っては取り壊す…を繰り返していた。だから、場内がイビツな形をしていたり、変なところに大きな柱があったりして、それが映画館の個性でもあった。

 市内から次々と老舗映画館が閉館を続けていた平成7年に、須貝ビルは大規模なリニューアルを行う。地下の映画館はゲームセンターとなり「札幌劇場」を分割して、6スクリーンのシネマコンプレックスに生まれ変わったのだ。時代のニーズに合わせながら、映画の灯を守り続けてきた最古参の「ディノスシネマズ札幌劇場」も一旦ここで営業を終了するが、現在、新しい移転先を探しているという嬉しい発表もされている。また「札幌劇場」の看板を掲げた映画館で、映画を観る事ができるのもそんなに遠くないかも知れない。


出典:映画館専門サイト「港町キネマ通り」
取材:2007年8月
※写真は2007年に撮影したものです

語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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