岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

ドイツの難民問題をテーマにした社会派コメディ

2018年03月26日

はじめてのおもてなし

©2016 WIEDEMANN & BERG FILM GMBH & CO. KG / SENTANA FILMPRODUKTION GMBH / SEVENPICTURES FILM GMBH

【出演】センタ・バーガー、ハイナー・ラウターバッハ、フロリアン・ダーヴィト・フィッツ、パリーナ・ロジンスキ、エリヤス・エンバレク ほか
【監督】サイモン・バーホーベン

難民の受け入れによって家族の新たな歯車が動き始める

 社会問題を扱った外国映画の多くは、テーマに関するその国の事情や背景をいちいち説明しない。ハリウッド映画以外の大部分は、自国民を相手に作っているから当然である。「はじめてのおもてなし」を理解するうえで知っておきたいのは、ドイツでは2015年以降、メルケル首相の政策により、100万人以上の難民を受け入れている事。ナチス・ドイツが、ユダヤ人、身障者、少数民族等を虐殺したのを反省し、移民・難民受け入れに寛容な立場を貫いている事。それを国民が支持している事。それに加え、勤勉で規則を守るのが得意な国民気質である事だ。
 美しい庭のある裕福なハートマン家は難民受け入れ可能な中産階級だ。リベラルな元教師の妻に、頑固で保守的・整形が趣味の夫、バツイチでワーカホリックの長男、ほったらかしにされていてヒップホップ好きの生意気な息子、自分探し中・青い鳥症候群の長女。バラバラだった家族の元に、ナイジェリア難民のディアロ君がやってくることから、新たな歯車が動き始める。
 映画はまずは異文化とのギャップで大いに笑わせてくれる。ディアロ君の友人たちとのガーデンパーティでのバカ騒ぎは、何故かシマウマまで登場して凄いことになってくる。建前のない物言いは、夫リヒャルトに「あなたは老人だ」とはっきり言うし、妻アンゲリカには夫に「敬意を示せ」と物申す。ここら辺、ドイツ人にとって耳の痛い事なんだろうとお察しする。
 終始ゲラゲラ笑って気楽に観られる映画であるが、ディアロ君が唯一過去を語るシーンは胸が詰まる。彼が、どんな思いで故郷を離れ海を渡ってきたのか?、どうして難民になったのか?この話を聞いてどう感じるかが、見せ場であることには間違いない。
 イスラム教徒や難民などに「犯罪予備軍」「テロ容認」などのレッテルを貼りつけ一般化し排斥する動きを、ドイツ人の家族の問題に絡めながら問題提起した、社会派コメディの良作である。

『はじめてのおもてなし』は岐阜CINEXほか、全国で公開中。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

観てみたい

100%
  • 観たい! (5)
  • 検討する (0)

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

ページトップへ戻る