岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品はじめてのおもてなし B! さらば、笑って泣けるを売りにする映画 2018年03月26日 はじめてのおもてなし ©2016 WIEDEMANN & BERG FILM GMBH & CO. KG / SENTANA FILMPRODUKTION GMBH / SEVENPICTURES FILM GMBH 【出演】センタ・バーガー、ハイナー・ラウターバッハ、フロリアン・ダーヴィト・フィッツ、パリーナ・ロジンスキ、エリヤス・エンバレク ほか 【監督】サイモン・バーホーベン 私にとってはワースト、でも別の人には… その紹介文の文言でやめるべきだった。いわく、笑って泣ける。いわく、本国ドイツで大ヒット。そして緩〜い平仮名だけの日本タイトル。こんなに自分に合わないヒントが揃っているのに、好きなドイツ映画というだけで映画館に足を運んだ選択能力のなさに自己嫌悪。 バラバラになっている家族の物語。よくある話だ。その家族が難民である青年を受け入れる。難民なのは今風だが、崩壊寸前であれ円満であれ、家族が他者を受け入れる事によって変化していくのもよくある話。ガッカリなのは、バラバラだった家族の関係が文字通りあれよあれよという間に修復、ハイ終了となる綺麗事、ご都合主義にある。その中には初老男性の人種的偏見、長い夫婦生活による妻の不満など、短いスパンではとてもじゃないが解決が困難な問題も見える。もちろんコメディだから全てメデタシ、というのは必須なのかもしれない。 しかし、せっかく現代の大きな課題である難民を物語に注入したのなら、脳天気に丸く収めず、現実を見つめつつ明るさを明日に繋げる、という着地点にすればよかったのにと思う。理想の提示と綺麗事は違う。難民青年と少年の交流はよかったし、多くの人物関係を分かり易く見せる力もあるだけにもったいない。 と、ここまで書いてふと考える。世の中の事であれ家族間の事であれ、厳しい現実から目を別の方向に向ける映画が私は好みでない。だが、逆にそういった映画が好きな人もいる。現実をちょっと忘れて全てがハッピーエンドの口当たりのいい映画。私にはワースト候補でもその人にはベスト候補。色々な感想と解釈。だから映画は面白い。 『はじめてのおもてなし』は岐阜CINEXほか、全国で公開中。 語り手:橘 真一元映画ライター、前映画中心の古書店経営、現某映画の会代表。色々とユニークに映画と関わってきている映画好き。「考えるな、感じろ」は好きだが「感じろ、その上で考えろ」はもっと好き。 100% 観たい! (5)検討する (0) 語り手:橘 真一元映画ライター、前映画中心の古書店経営、現某映画の会代表。色々とユニークに映画と関わってきている映画好き。「考えるな、感じろ」は好きだが「感じろ、その上で考えろ」はもっと好き。 2024年04月12日 / コヴェナント/約束の救出 手に汗握るヒューマン・サスペンスの秀作 2024年04月12日 / コヴェナント/約束の救出 二つの救出劇が紡ぐ戦火の友情 2024年04月12日 / コヴェナント/約束の救出 危険を顧みない友情とスリリングな逃亡劇の戦争娯楽映画 more 2019年08月07日 / 刈谷日劇(愛知県) 愛知を代表する工業都市で名作を送り続ける街のミニシアター 2021年01月19日 / 下高井戸シネマ(東京都) 住宅街の中…マンションの2階にある映画館 2020年05月27日 / 舞鶴八千代館(京都府) 日本海の港町で映画の灯を守り続ける映画館 more
私にとってはワースト、でも別の人には…
その紹介文の文言でやめるべきだった。いわく、笑って泣ける。いわく、本国ドイツで大ヒット。そして緩〜い平仮名だけの日本タイトル。こんなに自分に合わないヒントが揃っているのに、好きなドイツ映画というだけで映画館に足を運んだ選択能力のなさに自己嫌悪。
バラバラになっている家族の物語。よくある話だ。その家族が難民である青年を受け入れる。難民なのは今風だが、崩壊寸前であれ円満であれ、家族が他者を受け入れる事によって変化していくのもよくある話。ガッカリなのは、バラバラだった家族の関係が文字通りあれよあれよという間に修復、ハイ終了となる綺麗事、ご都合主義にある。その中には初老男性の人種的偏見、長い夫婦生活による妻の不満など、短いスパンではとてもじゃないが解決が困難な問題も見える。もちろんコメディだから全てメデタシ、というのは必須なのかもしれない。
しかし、せっかく現代の大きな課題である難民を物語に注入したのなら、脳天気に丸く収めず、現実を見つめつつ明るさを明日に繋げる、という着地点にすればよかったのにと思う。理想の提示と綺麗事は違う。難民青年と少年の交流はよかったし、多くの人物関係を分かり易く見せる力もあるだけにもったいない。
と、ここまで書いてふと考える。世の中の事であれ家族間の事であれ、厳しい現実から目を別の方向に向ける映画が私は好みでない。だが、逆にそういった映画が好きな人もいる。現実をちょっと忘れて全てがハッピーエンドの口当たりのいい映画。私にはワースト候補でもその人にはベスト候補。色々な感想と解釈。だから映画は面白い。
『はじめてのおもてなし』は岐阜CINEXほか、全国で公開中。
語り手:橘 真一
元映画ライター、前映画中心の古書店経営、現某映画の会代表。色々とユニークに映画と関わってきている映画好き。「考えるな、感じろ」は好きだが「感じろ、その上で考えろ」はもっと好き。
語り手:橘 真一
元映画ライター、前映画中心の古書店経営、現某映画の会代表。色々とユニークに映画と関わってきている映画好き。「考えるな、感じろ」は好きだが「感じろ、その上で考えろ」はもっと好き。