岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

山間の草原で繰り広げられるスリラー

2022年11月28日

LAMB/ラム

@2021 GO TO SHEEP, BLACK SPARK FILM &TV, MADANTS, FILM I VAST, CHIMNEY, RABBIT HOLE ALICJA GRAWON-JAKSIK, HELGI JÓHANNSSON

【出演】ノオミ・ラパス、ヒルミル・スナイル・グズナソン、ビョルン・フリーヌル・ハラルドソン
【監督】ヴァルディミール・ヨハンソン

羊可愛や わが子可愛や

アイスランド。高い山に囲まれた谷間にある草原。霧に覆われた周辺一帯に緊張が訪れる。それを察知するのは人以外の生き物。家畜小屋にいる羊たち。気配に怯える様子。

この不穏な雰囲気に包まれた謎めいた導入が、『LAMB ラム』の映画としての色あいを暗示するが、それがホラーなのか? スリラーなのか? は判断できない。

羊飼いを営むマリ(ノオミ・パラス)とイングヴァル(ヒルミン・スナイル・グドゥナソン)の夫婦は、穏やかな日常を過ごしている。羊小屋の掃除、餌やり。ふたりの朝食の準備。いつものルーティンが粛々とすすむ。

マリを演じたノオミ・パラスは、スウェーデン生まれだが、幼い頃、アイスランドで過ごした時期があり、7歳の時、出演したスウェーデン、アイスランド合作映画『エネミーランド』(1988/日本未公開)で俳優としてのキャリアをスタートさせた。本作では、その時、習得したアイルランド語を屈指して難役をこなしている。

夫婦の間に見える寡黙で淡々としたそぶり。そこに立ちこめるどことなく寂しげな様子。そして、次第にあきらかになる悲しい過去が、ふたりの絆を強くしていることが分かる。

ある日、懐妊していた雌羊が出産する。その介助をするマリとイングヴァルが見たものは…。

映画はミステリアスに進行する。夫婦が出産に立ち会い取り上げた”羊の子” を羊小屋ではなく、ふたりの家で大切に育てる行為。これを観客は想像するしかない。とは言え、何かしらの予感は冒頭の暗示からも察することはできるのだが…。

そこに、しばらく疎遠になっていたイングヴァルの弟ペートゥル(ビョルン・フリーヌル・ハラルドソン)がやって来る。かつては夫婦を手伝い一緒に暮らしていたこともある弟。その存在が穏やかな生活にさざなみを立てることになる。

伝説色の強いホラー映画に落とし込むことをせず、ある種の品格を保つ苦心は認めるが、好みとは言い難い。ただ、劇的な演出ではなく、さりげなく明らかになる謎の提示にはドキリとする。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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