岐阜新聞 映画部

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恋に落ち、ジェンダー不平等に怒り、科学の功罪に悩む

2022年11月30日

キュリー夫人 天才科学者の愛と情熱

© 2019 STUDIOCANAL S.A.S AND AMAZON CONTENT SERVICES LLC

【出演】ロザムンド・パイク、サム・ライリー、アナイリン・バーナード、アニャ・テイラー=ジョイ
【監督】マルジャン・サトラピ

圧倒的男社会で生き抜く傲慢さ

私が小学校の頃の偉人伝と言えば、エジソンと野口英世とキュリー夫人だ。漫画家のさくらももこさん(1965-2018)にとってもそうであったらしく、「満点人物伝 ちびまる子ちゃんのキューリー夫人」(集英社/2010刊)として出版されている。

キュリー夫人(1867-1934)は一般的には、「放射線を研究し、物理学と科学の分野で二度のノーベル賞に輝いた科学者。強い意志と熱い情熱で多くの困難を乗りこえた努力の人」(集英社の内容紹介より)とされており、私もその側面しか知らなかったが、本作は人間キュリー夫人が恋に落ち、ジェンダー不平等に怒り、自らの発見や研究の結果に苦悩する姿がドラマチックに描かれ、私にとって新しいキュリー夫人(マリ・キュリー)像となった。

本作でキュリー夫人を演ずるのは、『ゴーン・ガール』(2014)で、夫に復讐するためには手段を選ばず徹底的に追い詰めていく妻を演じたロザムンド・パイク。圧倒的男社会の中で、ときに傲慢にみえるほど自己主張が強いキュリー夫人をひるむことなく演じている。

そしてどちらかというと控えめな優しい夫で共同研究者のピエール・キュリー(1859-1906)を演ずるのはサム・ライリー。結婚したマリと喧嘩した際、つい「君の欠点はその傲慢さだ」と言ってしまう。それでも陰になり日向になり彼女の研究を支えていく姿は、当時の男としては先進的な価値観の持ち主だ。

常に強気のキュリー夫人が夫ピエールを46歳で亡くしたとき、生前夫が「マリがいなければ自分の人生はあり得ない」と言っていたと知り、夫人は「あなたがいなければ自分はなかったと言えばよかった」と涙を流して悔やむが、後悔先に立たずだ。もっと夫に優しく接してほしかったなあ。

放射線の発見は原爆や原発事故に繋がっていく。一方で戦傷兵を救うためのX線装置にも応用される。科学の功罪は学者には罪は無いのである。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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