岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

夢か現(うつつ)か幻か、火と氷の国のファンタジー

2022年11月28日

LAMB/ラム

@2021 GO TO SHEEP, BLACK SPARK FILM &TV, MADANTS, FILM I VAST, CHIMNEY, RABBIT HOLE ALICJA GRAWON-JAKSIK, HELGI JÓHANNSSON

【出演】ノオミ・ラパス、ヒルミル・スナイル・グズナソン、ビョルン・フリーヌル・ハラルドソン
【監督】ヴァルディミール・ヨハンソン

アダは神さまが遣わした神の子?

鑑賞後に調べたが、アイスランドの羊はヴァイキングが入植した874年には家畜として持ち込まれ、貴重な食糧になると共に、寒さから身を守るためのウールとしても重要な役割を果たしてきた。アイスランドシープは、大自然の中で自由に放牧されて育てられ、他品種との交配はせず純潔な品種としてブランド化しているということだ。

またアイスランド人約36万人のほとんどはキリスト教徒。旧約聖書では牛や羊は"清い動物"とされ、神に捧げたり人が食べたりできる動物であり、宗教的な意味でも羊の重要性はとても高いのである。

『LAMB ラム』は、アイスランドに暮らす羊飼いの夫婦の物語だ。

アイスランドのイメージは、多くの活火山とヨーロッパ最大の氷河がある「火と氷の国」。そして北米大陸とユーラシア大陸がぶつかって大地に裂け目が出来た「地球が生まれる場所」だ。

そんな神秘的で妖精が出てきそうな場所だからこそ、羊の顔をした人間が生まれてきてもホラーにはならずファンタジーになるのだ。

全体に台詞は少なく、ましてや説明的な台詞や場面も出てこないので類推するしかないのだが、なぜ羊人間なのか?それが何を象徴するのか?

冒頭に記したアイスランド人と羊との関りから、イングヴァル(ヒルミル・スナイル・グズナソン)とマリア(ノオミ・ラパス)夫妻が飼育する母羊から生まれてきた子アダは、神様が遣わした神の子という存在で、妻が子どもを亡くしたショックで妄想が出てきたわけではないのだと解釈した。

成長したアダを連れて歩く夫妻。見ている私の感じ方も、最初は異様な違和感であったが、時間が進むにつれて生活に溶け込んできて、シュールな光景ではあるが違和感が薄れてくるのだ。

しかしことは"めでたしめでたし"で終わるわけがない。人間のエゴと傲慢さにより、不幸な結末へと向かっていくのである。夢か現(うつつ)か幻か、大変怖い映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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