岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

静かでスタイリッシュな感覚SF映画

2022年11月22日

アフター・ヤン

©2021 Future Autumn LLC. All rights reserved.

【出演】コリン・ファレル、ジョディ・ターナー=スミス、ジャスティン・H・ミン、マレア・エマ・チャンドラウィジャヤ、ヘイリー・ルー・リチャードソン
【監督・脚本・編集】コゴナダ

かけがえのない人はモノなのか?

緑広がる庭のある住宅。無機質で神経質な雰囲気に包まれた家で、ジェイク(コリン・ファレル)とカイラ(ジョディ・ターナー=スミス)は、養女のミカと暮らしている。そしてもうひとり、ヤン(ジャスティン・H・ミン)がいる。時にはミカの兄のように、夫妻にはもうひとりの子ども、あるいは気心の知れた友人のように見えるその存在。

ヤンは見た目だけでは分からないが、人型のアンドロイド=ヒューマノイドロボットだった。

『アフター・ヤン』はアメリカの小説家アレクサンダー・ワインスタインの短編小説をもとにしたSF映画である。

SF映画と言っても、大きなビジュアルの仕掛けがあるわけではなく、夫婦の家はスタイリッシュで、茶葉店を営む地下室のような空間に温もりはないが、それが近未来風を感じさせはする。

朝、動かなくなってしまったヤンを発見する。ミカの落胆ぶりと夫婦が見せる狼狽えぶりから、ヤンが家族にはかけがえのない存在であることが分かる。

ところが、ヤンは中古品で、それがロボットメーカーの正式な認証を受けていないとか、家電まがいの議論が交わされるあたりは、"モノ" として虚しさが漂う。

ヤンの修理のため奔走するジェイクが辿り着くのは、闇の修理人だったりして、展開はアナログ的だが、ヤンの個体は博物館に展示される類の初期型のヒューマノイドだと判明する。

修理は不可能との告知を受け、ジェイクが決断するのは、ヤンの記憶として残された映像を見ることだった。

SFっぽい仕掛けは、ジェイクが移動する自動操縦らしき自動車の車内のみ。修理を拒絶し、買換えを勧める消費社会の冷たい合理主義が浮き彫になるあたりは、SFによくある現代社会への暗喩のメッセージとも取れるが…。

ヤンの記憶には家族が知ることのなかった "個の記憶" がのこされている…というセンチメンタルな結末とかみ合うことはない。イメージとスタイルのみが先行するのは些か物足りない。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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