岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

素のままの普段通りの稲垣吾郎さん、今泉ワールド全開だ

2022年11月24日

窓辺にて

© 2022「窓辺にて」製作委員会

【出演】稲垣吾郎、中村ゆり、玉城ティナ、若葉竜也、志田未来、松金よね子
【監督・脚本】今泉力哉

台詞を言っているのでなく、おしゃべりしているだけ

私は稲垣吾郎さんを、19歳で主演した家庭教師と少年の恋を描いた『プライベート・レッスン』(1993)の頃から役者として注目していた。

もちろんスーパーアイドルなので映画中心とはいかないが、それでも『十三人の刺客』(2010)での冷酷無慈悲な殿様役 や、『半世界』(2019)での街を出ることのなかった炭焼き職人役などで、秀でた演技者として存在感を示していた。

一方私が現役の監督の中でもとりわけ贔屓にしているのが今泉力哉監督である。ご自身が登壇されたCINEX映画塾で、映画評論家の町山智浩さんが飛び入り参加された『愛がなんだ』(2019)の回は今でも忘れられない。

『窓辺にて』は、オリジナルストーリーということもあり今泉ワールド全開、人間の弱さもダメさも全部ヨシとした、押し付けも極めつけもしないゆるい恋愛ドラマである。

そんな肯定的な今泉ワールドに稲垣吾郎さんは、常連さんのように見事に溶け込んでいる。というか稲垣さんはお芝居などしておらず、素のままの普段通りの稲垣さんにしかみえない。これこそ今泉マジックなのだ。

稲垣さんをはじめ他の出演者もそうだが、台詞を言っているのではなく、おしゃべりしているだけ。しかし日常会話ではない。この絶妙なバランスがたまらない。今泉映画が時間を感じさせないのは、重い台詞が少なくて疲れないからだ。これぞプロフェッショナルの仕事だ。

映画は世間で常識とされているものを疑ってかかっている。もちろん不倫はダメだとの前提だが、好きになる気持ちも愛の形も人によって様々。ラブホに男女が泊まったら誰もがやるとは限らない。

それと妻の不倫がわかっていても怒りの感情がわかない気持ち。ちっぽけな悩みかもしれないけれど、自分にとっては円安問題と同じくらい深刻なのだ。悩みの深さに貴賎なし。

今泉監督と稲垣さんの最高のコラボレーション。大好きな1本。傑作です。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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