岐阜新聞 映画部

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深田監督は「LOVE LIFE」の歌詞を、どう解釈したのか?

2022年11月21日

LOVE LIFE

©2022 映画「LOVE LIFE」製作委員会&COMME DES CINEMAS

【出演】木村文乃、永山絢斗、砂田アトム、山崎紘菜、嶋田鉄太、三戸なつめ/神野三鈴、田口トモロヲ
【監督・脚本】深田晃司

常識的な価値観に鋭く疑問をつきつける

矢野顕子さんが1991年に発表した曲「LOVE LIFE」。「♪どんなに離れていても 愛することはできる」と始まる歌詞は、「愛にはひとそれぞれ色々な形がある、でも生きてだけはいてね」と優しく歌った名曲だ。

この歌に心酔した深田晃司監督が、この歌詞から何を抽出し、どう再構築し、いかに解釈したのか?であるが、家族を個の集合体と捉え常識的な価値観に鋭く疑問をつきつける、いつもの深田監督の世界になっていた。見事である。

前夫の子どもを連れて再婚した妙子(木村文乃)と初婚の二郎(永山絢斗)夫妻。息子のオセロ大会優勝祝いのホームパーティに呼ばれた二郎の父(田口トモロウ)の居心地の悪さと、表面的には理解しようと務める母(神野三鈴)。

何事も起こらなければ、他の家族に対する不平不満は腹の中にグッと納め、上手に取り繕いながらやっていけたと思うが、取り返しのつかない不幸な出来事がおこったときは、閉めていたフタがとれて感情が爆発したり優先されてしまう。

それは善人とか悪人とかではなく人間の多面性なのだ。あるときは仏のような気持ちで理解しようとするし、またあるときは鬼のような言葉を吐いてしまう。深田監督の映画は、日常で使う短い言葉の中にゾッとするような台詞が出て来て背筋が凍りつく。

この家族だけでも感情は複雑に交錯しているのに、さらに二郎の元カノ(山崎紘菜)と、妙子の元夫(砂田アトム)が加わるので事態はさらにややこしくなってくる。

深田監督の凄いところは、それぞれの俳優の役割が深掘りできていて薄っぺらでない上、ストーリーテラーとしても抜きんでていることだ。先の展開が読めてしまうことはなく、それでいて伏線の張り方も小道具の使い方も上手く、二度目三度めでも新しい発見がある。

映画は『LOVE LIFE』のタイトルが最適な瞬間に入り、最高のタイミングで曲が流れる。紛うことなき傑作である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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