岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

共感も感情移入もできないが、寄り添うことはできる

2022年11月08日

ドライビング・バニー

©2020 Bunny Productions Ltd

【出演】エシー・デイヴィス、トーマシン・マッケンジー、エロール・シャン、トニ・ポッター、ザナ・タン
【監督】ゲイソン・サヴァット

バニーは決してへこたれず常に前を向いて生きている

ニュージーランドは政治的には女性が活躍している国である。首相は2017年に37歳で就任した労働党党首のジャシンダ・アーダーンで、2019年には産前産後休暇を取得し世界中の注目を集めた。さらに先日10月25日に行われた国会議員選挙では初めて女性が過半数を占めた。画期的である。

ニュージーランドは、『ロード・オブ・ザ・リング』や『ナルニア国物語』などのロケ地として有名であるが、ニュージーランド人そのものの生活の様子や生き様を描いた映画は、不勉強ながらジェーン・カンピオン監督の『ピアノ・レッスン』(1993)しか知らなかった。

『ドライビング・バニー(原題:The Justice of Bunny King)』は強い女性の物語である。私からすると日本では女性は「頑張らなきゃ」男性と対等に扱われないが、ニュージーランドでは「頑張らなくても」対等に扱われていると思っていた。

しかし本作を観て思った。性被害の圧倒的多くは女性であると。そして「女性が活躍する」世界はまだまだ発展途上であることを。

主人公のバニー・キング(エシー・デイヴィス)のお仕事は、停車中の車のガラスを拭いて日銭を稼ぐ商売。格差はここまで来たかという驚きで映画が始まった。そしてどういう訳か妹夫婦の家に居候していて実の娘にも会えない境遇。

映画のストーリーが進行するにつけ、バニーの行動はいつも衝動的で反社会的だとわかってくる。その姿には共感も感情移入もできないかもしれないが寄り添うことはできる。彼女の気持ちは痛いほどわかるのだ。

娘の誕生日を祝ってやりたいだけなのに社会のルールだといって拒まれる。最後は、図らずも人質をとって籠城するはめになるという女性版『狼たちの午後』(1975)みたいになってくる。

バニーは逆境にも決してへこたれず常に前を向いて生きている。感情移入なんか出来なくてもいい。応援するのみだ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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