岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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シイノが生きていくことで、マリコの思い出も生きていく

2022年11月02日

マイ・ブロークン・マリコ

©2022 映画『マイ・ブロークン・マリコ』製作委員会

【出演】永野芽郁、奈緒、窪田正孝、尾美としのり、吉田羊
【監督】タナダユキ

マリコの遺骨と最後の二人旅、四十九日の旅だ

私の映画を観る楽しみのひとつにロケ地を推定するというのがある。特に地方ロケの場合は今までの知識を総動員して考える。

本作は、ブラック企業勤めのシイノ(永野芽郁)が親友のマリコ(奈緒)の遺骨をもって、学生時代にマリコが行きたがっていた"まりがおか岬"へ最後の二人旅に出かけるというのがコンセプトだ。

物語の重要なシーンとなる岬だが、聞いたことが無い。"青い森鉄道"と、登場する駅が"下田"ということから青森県の太平洋側だとは推測できたが映画を観ている間には確定できずだった。あとで調べると、ロケ地は八戸市の種差海岸周辺で岬は"葦毛崎(あしげざき)"。国内各地をロケハンし、物語の世界観にマッチしたのがここだったそう。

程よい高さの岩肌と陽に光るススキの原は、マリコの遺骨が快晴の空に舞い散るのに絶好の場所である。マリコが苦しみから解放され自然の中に回帰するにふさわしく、シイノも悲しみから解放され生きる希望を見出せたのだ。

原作の漫画は読んでないが、物語はほぼ原作通りだとのこと。漫画らしい飛躍や省略をそのまま描いたのか、リアルな映像にした時の"有り得なさ"や"辻褄の合わなさ"はある。しかし演出の巧みさと"画"の力強さ、永野芽郁と奈緒の演技のうまさなど総合的な力があり、脳裏に焼き付く映画となっている。

シイノがマリコの実家から骨壺を奪い取って裸足で飛び降りる。その先は川原だ。そこはあたかも三途の川の入り口で賽の河原にいるが如く、向こうには渡らず四十九日の旅に出る。

マリコは何故死んだのか?シイノは理由がわからない。

マリコを何故助けてあげられなかったのか?シイノはきっと自分を責めているに違いない。

でも実はマリコ自身だって、何故死んだのかわかってないのかもしれないのだ。

癖が強くてめんどくさかったマリコ。シイノが生きていくことで、マリコの思い出も生きていくのだ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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