岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

ある夏休み大切な1日が生まれる瞬間

2022年10月25日

サバカン SABAKAN

©2022 SABAKAN Film Partners

【出演】番家一路、原田琥之佑、尾野真千子、竹原ピストル、貫地谷しほり、草彅剛、岩松了、村川絵梨、福地桃子、ゴリけん、八村倫太郎、茅島みずき、篠原篤、泉澤祐希
【監督】金沢知樹

目的のイルカはいなかったけれど 想い出はちゃんと刻まれる

1986年夏、長崎のとある町が舞台。

文集を書くことが得意な久田孝明(番家一路)は、クラスで作文を披露され、担任の先生からも褒められて、ちょっと、得意気。

同級の竹本健次(原田琥之佑)は、家がボロなのをからかわれている。心ないクラスメートたちは、家の見学ツアーを実行する。孝明はそれに同行はするが笑うことは憚れる。

久田家は夕食中も、両親(尾野真千子、竹原ピストル)の口喧嘩が絶えない。でも、それはいがみ合いとかいうものではなく、暗黙のルーティンのようなもので、孝明も弟も気にすることなく、愛情に包まれた幸せな日常を過ごしていた。

『サバカン SABAKAN』は小学5年生の夏休み、孝明と健次の冒険譚を描く青春映画である。

《寿司》回転寿司が広く普及し始めるのは70年代後半のこと。多分当時、寿司はまだご馳走であった。寿司屋の暖簾をくぐるということはなく、家で作る巻寿司やいなり寿司が主流で、それとて、お祭りやお祝い事の特別な料理だった。寿司屋から出前 をとるというのは、"盆と正月" 的な、さらなる特別感が加わる。

孝明は竹本家に招かれ、そこで健次から寿司を振舞われる。その握り寿司にはサバカンの切身が乗っかっている。

《結界》子どもの頃、親や学校から、行動を制限する "結界" が張られた。それは完全安心を願う制限で、その目印には川や山や道路があった。○○公園の大池は底なしだから近づいてはいけないとか、大型車が激しく行き来する国道は、行ってはいけない危険の対象だったりした。

孝明と健次は海に現れたイルカを見るために、ふたりだけの冒険を試みる。それは山=結界を越える小学生には大きな旅だった。

子どもの頃の想い出は人それぞれ、孝明と健次の冒険譚は誰もが体験したものではないが、その小さなエピソードが郷愁へと誘う。

単純ではない子ども同士の感情の衝突。見知らぬ町の知らない人の親切。親の愛情に気づかされる瞬間。忘れてしまっていたものが見つかる。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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