岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

不明な現実と揺らぐ感情が交錯する家族の物語

2022年10月11日

彼女のいない部屋

©2021 - LES FILMS DU POISSON – GAUMONT – ARTE FRANCE CINEMA – LUPA FILM

【出演】ヴィッキー・クリープス、アリエ・ワルトアルテ
【監督】マチュー・アマルリック

ヴィッキー・クリープスの細やかな演技が真実へ導く

『彼女のいない部屋』の宣伝用資料にあるストーリーの説明には、"家出をした女性の物語、のようだ" という一行のみがある。

ミステリーみたいに推理を愉しむ映画ではなさそうなのに、何故か?思わせぶりに伏されている。

薄っすらと明るくなり始めた早朝。クラリス(ヴィッキー・クリープス)は、ひとり目覚める。夫と2人の子どもは、まだ夢の中。

淡々と身支度を整えたクラリスは、車に乗り込み家を後にする。たいした荷物も持たず、何かの感情が見えるわけでもなく。事前に示された唯一のストーリー説明の通りに、彼女は家出をしたのだろうか? 家族を捨てて。

舞台はフランスの地方都市。クラリスは道路沿いのパーキングエリアにあるダイナーで休憩をとる。その様子からは日常のやり取りをしているだけに見えるが、不意に、クラリスが危うげに、取り乱したりする。

家では、目覚めた夫のマルク(アリエ・ワルトアルテ)と2人の子どもが、母親の不在に慌てながらも、いつもの朝の準備に追われている。マルクは妻のことを気にかけつつも、子どもの世話に追われる。

やっぱり、クラリスは突然、家出したのだろうか?

映画の表現は自由で、これといった定義とかは存在しない。それでも教科書のような書物では、映画の文法などといって、ストーリーの展開や、それを編集によって組み立てる方法などを理論的に説明したりもしている。これもまた映画。

監督は俳優としても活躍するマチュー・アマルリックで、本作は長編第4作。彼が用意した演出意図は、ストーリーを明かさないこと。

クラリスの行動を追っていけば、何らかの糸口が見つかるのかも知れないと予想するが、それも見事に裏切られるのだから、疑問符は増す一方。

さて、これ以上書いたりすれば、創作の狙いを損なうことになる。バラバラに散りばめられた、いくつかのパズルのようなエピソードが組み立てられる瞬間。これも多分人それぞれに違って見える。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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