岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

今もあるカルト宗教の不気味さを、予言したかのような映画

2022年10月04日

ビリーバーズ

©山本直樹・小学館/「ビリーバーズ」製作委員会

【出演】磯村勇斗、北村優衣、宇野祥平、毎熊克哉、山本直樹
【監督・脚本】城定秀夫

はたからみたら滑稽なことを大真面目にやっている

有名なエスニックジョークに、男2人と女1人が無人島に流れ着いたらどうなるか?というのがある。

フランス人 女は男の1人と結婚し、もう1人の男と浮気する

ドイツ人 女は男の1人と結婚し、もう1人の男が戸籍係を務める

アメリカ人 女は男の1人と結婚し子供を設けるが離婚、もう1人の男に親権を求めて弁護士役を頼む

日本人 どちらが女と結婚したらいいか、本社にメールで指示を仰ぐ

各国人の性格を端的に示したジョークだが、ではカルト宗教信仰者はいったいどうなるのか?というのが物語の骨子だ。

カルト宗教の教義には普通の人には理解できない妙なルールや教えがあるが、"ニコニコ人生センター"でも、大股広げて足の裏を合わせるとか、淫夢をみたら告白し自ら掘った穴に下半身を埋めて一昼夜過ごすなど、はたからみたら滑稽なことを大真面目にやっている。

しかしながらリーダー格の"議長"役が宇野翔平さんであるわけで、その風貌からして端から怪しすぎる。

監督は城定秀夫さん。エロスに関しては手練手管の人なので、カルトの教えがエロスになっていく必然性はリアルだし、匂い立つような男女のからみは美しくもありエッチでもある。

純粋に信奉してそうで無防備な"副議長"役の北村優衣さんの脱ぎっぷりは潔く、映画に引っ張りだこのイケメン俳優"オペレーター"役の磯村勇斗君の不精髭と頬がこけた顔は作り込みが見事だ。

彼ら3人はカルト教団の信者を馬鹿にする乱入者に対して制裁を加える。死体の処理方法の異様さを含め、彼らが教義を都合よく解釈し次第に狂気を帯びてくる様子は、洗脳の怖さがよくわかる。

この映画を見ると、約900人が集団自殺した「人民寺院事件」(1978)やオウム真理教の一連の事件(1988~1995)を思い出す。しかし今もまだカルト宗教に苦しめられている人たちがいる。それを予言したかのようなタイムリーな映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

観てみたい

100%
  • 観たい! (11)
  • 検討する (0)

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

ページトップへ戻る